「フッフッフ、帰ってきてローが原形留めてなかったら覚悟しろナマエ」

数時間前にそう言って出て行った若の姿を思い出す。やだなあそんなことしないってと言って手を振った自分も思い出す。ごめん若、ごめん未来の俺、無理そうだ。

「やだっ、さわんな…っ!!」

「心配すんなって、なあんも怖い事はしねえよ」

小さい体を縛りつけるなんて野暮なことはしない。ソファーに腰掛け裸にひん剥いた体を膝の上に乗せ、あやすように頭を撫でながら俺の胸元に押さえつける。普段からはだけてる胸元に子供特有の体温が直に伝わり思わず舌舐めずり。このまま食っちまいたいと本能が叫んだ。

「ナマエさん…っ!やっ!」

ぺろりと首筋をなめれば素直に跳ねる体にくつりと笑う。真っ赤になって泣きそうな顔をするローにむくむくと大きくなっていく欲にまあ待てと理性が待ったをかけた。普段はほとんど役目をはたしていない割に強靭な理性に称賛を贈りながら、テーブルに置かれた軟膏を指に掬い取ればつんとした臭いが鼻につく。

その指を、下肢にするりと伸ばした。

「いっ!!」

びくりと大きく跳ねる体と痛みに歪む顔に俺はいい笑みを浮かべていることだろう。

「火傷はいてぇよなあ、ロー」

ぬりぬりと、わざと強めに指を押し当てれば潤む瞳。普段は生意気な口が弱弱しく俺を呼ぶ姿がたまらなく可愛らしいと首元にキスを落とした。

人がちょっと昼寝をしている間に何をどうしたのかわからないほどあっつあっつのお湯を被ったローがキッチンで叫びを上げてたたき起こしてくれたのは少し前のこと。

慌てて服を脱がせばわき腹から腰に掛け水ぶくれを通り越して赤くただれた火傷があった。うわこれどやされるわと血の気の引いた俺はとりあえず火傷を冷やし、キッチンを片付け、専属の医者に薬をもらい、自他ともに認める小児性愛好者である俺には嬉しいような生殺しのような現状に至るわけだ。

これ何もしなくてもどやされるよなともうすぐ帰ってくるであろう若の笑みに若干の恐怖を覚えながら、広範囲の火傷に軟膏を伸ばしていく。

「ナマエさ…っ、いたい…っ!」

でもここでおいしく頂いてしまえばその怖い若の笑みは恐らく二度と見られないのだろうと思う。物理的な意味で。

「…っ、ふ…」

涙をこらえるローに優しくキスを落とし、火傷に少しばかり爪を立てれば小さな悲鳴が上がった。

「ほら、包帯巻くから腕上げな」

ガーゼを当てて、ガーゼを剥ぐときも痛いだろうなと思いながら包帯を巻いていく。ぜひとも俺に剥がさせてほしいが恐らく若はさせてはくれまい。

手際よくまかれた包帯を見ながらローはやっと一息ついたと言わんばかりにそっと肩の力を抜いた。ぜひとも持ちこたえた俺の理性に大喝采を贈ってほしい。首をもたげかけている欲を宥めすかしながらローの頭を撫でて床へと下ろしてやる。ローが驚いたようにこちらを見上げた。

「ほら、さっさと服着ないと若が…」

「フッフッフ、俺がなんだ、ナマエ」

「若が…」

「フッフッフ」

「いだだだだだだ!ちょ!理不尽!俺無実だからああああ!!」

問答無用で握りつぶされようとしてる頭に絶叫を上げれば何をしたか言ってみろと相変わらず借金の取り立て屋さんのような声がして背筋が冷えた。いや、地元の取り立て屋さんだってここまで怖い声は出さなかった。

「ロー助けて殺されるうううう!!」

「え、あ、これは俺が!」

「フッフッフ!」

それからローが必至こいて弁解してくれたおかげ床とのキスは免れたが、代わりにこめかみにくっきりと残る若の手形と悪びれない若に泣きそうになった。

「若ひどい…っ!」

「フッフッフ、日ごろの行いって大事だよな」