「なあ若」

「なんだぁ?」

「ロー俺にくんない?」

「フッフッフ、このペド野郎」

「可愛いじゃねえか、ヴェルゴには勿体ねえ」

駄目だと虫でも追い払うように手を払う若に舌打ち。攫ってバックレるぞとぼやけばやってみろと帰ってきた。あーあと諦めきれずにソファにどかりと腰を下ろせば笑う若。若若言ってるけど敬うような人間かと口に出さず毒づいた。ローくれよ可愛いじゃねえかあの生意気そうな顔とか泣かしたら絶対可愛い間違いない俺にくれたら毎日めっちゃめちゃ甘やかして毎日ぐっちゃぐちゃに泣かしてそりゃあもう愛でて愛でて俺好みに育ててやるのにいいじゃねえか毎日可愛げねえ野郎に囲まれてんだからローくれよロー。ぶつくさと文句を垂れていたら、前触れなくみしりと頭蓋骨が悲鳴を上げた。

「だ・め・だ」

「いだだっあだだだ!ちょ、マジ痛い若っ!潰れる!俺の頭が潰れるっ!!」

みしりみしりとアイアンクローが頭をつぶす。必死になって叫ぶ俺と面白がってさらに圧を加える若。もがけどもがけど若の手は外れない。みしみしみし!あるまじき音に本気で血の気が引いていく。

「いらない!ローいらないからはなしてええええ!!」

「フッフッフ!わかりゃあいい!」

叫びというよりは断末魔になってきたころにぱっと手を離され床とキスしてしまう。ごつ、だか、がつ、だかわからない音ともに更なる痛みに襲われ盛大に呻き悶えた。

「悪魔めぇぇぇ…っ!」

「フッフッフ!」

あと数センチずれていれば毛足の長い絨毯が優しく迎えてくれたというのに、わざと大理石の上に落とすあたりが紛うことなきうちの若だ。ぜってぇ歯ァ欠けた、マジ外道、呻きながら抗議すれば借金の取り立て屋さんみたいなドスの利いた声が降ってきて呻くのみにとどめた。

「ヴェルゴなんかに世話させたら絶対将来グレるからな!俺が!」

「心配するな。お前はすでに駄目だ」