「ちょっとー、ペドとかマジキモいんですけどぉ」
「え?お前の魔女っ子ルックの方がキモ、うぎゃあっ!!」
ってことがあったんですが、若。
「フッフッフ、で?」
なんで俺が襲われてるんだと、俺の下でこめかみに青筋浮かべた若にマジチビリそう。ちがうの、俺の意志じゃないの。だって俺のハニーは十歳以下。3メートル超えのおっさんなんてマジうぎゃあっ!!
「…お…おぉ…声にならねぇ……!!」
「フッフッフ、退け」
息子に容赦ない蹴りをくれた若が悪魔っつうか魔王みたいな顔して、それでも泡吐きながら退かない俺に小首を傾げた。だから若、俺の意志じゃないの。お願いだから話は最後まで聞いて。マジお願い。
「ていうか何、マジなんなのお前。なんで今ブレーンバスター食らったの俺」
「しつもーん。アンタが一番怖いの誰ぇ?」
「え、若」
「オッケー(星)」
「え、なにが、うあああああああ!!!」
って話がまだ続くんです若。
「フッフッフ、意味がわからん」
でしょうともよ。俺もわからん。
とりあえず退きたいのは山々なんですが俺の体今俺のじゃないから。俺の意志迫害されてるから。そこ大事。そこ分かって。そして助けて若。
「そいつをヤれるまで襲い続ける呪い(笑)かけてやるからぁ、ぶち殺されろ(ハート)」
っていう台詞と共に謎のキラキラビーム発射された俺の心の傷。いやむしろ謎。ていうかマジ魔女っ子じゃなくて悪魔だろあの女。若、お願いだからそんな呆れ果てた顔しないで。俺もなんか複雑なんだって。
「お前とは長い付き合いだったが…残念だ」
「迷わず殺害の一択!!」
助けてよ!お願いだから!と叫んでも若は人の上で叫ぶなと今度は腹を蹴り上げてくれた。息子よりは、いいけどさ…!
ぷるぷる可哀想なバンビの様に震えていた俺に、青筋は引っ込めてくれた若が盛大なため息を吐く。いや、あの、なんかすみません。若のため息珍し過ぎて俺どうしよう。
「助けて、ってことはヤらせろ、ってことか?」
「あ」
「フッフッフ」
いや、あの、えー。冷や汗止まらない俺を見上げて、若がいつもの笑みを貼り付け笑う。止めてその笑顔が怖い。アイアンクローされるより怖い。
しかし俺の意思を迫害する体は、抵抗をやめた若にここぞとばかりに覆い被さり襲い掛かった。やめろ俺、死ぬぞ!
内心可哀想な小ウサギの如く震え上がっているというのに顔が勝手に若の胸元に向かっていく。普段からはだけている胸元に唇を寄せれば、ひくりと小さく震える胸。色づくそこに舌を這わせ、軽く歯を立てれば堪える様に強張る腹。抑え込んでいた腕を離しその顔を覗き込むように首筋に舌を這わせば、若が小さく息を零した。若の唇から覗く赤い舌が、扇情的に舌なめずりを一つ。
え、状況についていけないの俺だけ?
俺の手が俺の意思を無視して若の太ももに指を這わせ、少し身じろぐ若を押さえ込むように唇が若の首元を擽る。仰け反り、顕になった首筋に舌をはわせれば若の手が縋るように俺の肩を掴んだ。
少しだけ湿り気を帯びた互いの吐息を感じながら、未だ笑みを浮かべる若の唇に唇を重ねれば薄く開かれ招き入れられる口内。うわ、十歳以上とキスしたの初めてじゃね。そんな事を考えながらでも、互いに上擦り始める呼吸。子供相手じゃできないような、互いに絡ませ合うキスに舌先が甘く痺れた。
「…ふ…っ」
手が、焦らす様に内ももを撫で上げ、焦れたように若の腰が浮く。甘く痺れる舌をはなせば、伝う唾液が重力に従いぷつりと落ちた。静かに響く、二人の呼吸。
「なぁ…若」
なんだよ、と良いたげな視線に脇腹を擽るように指を這わせれば、身じろぐ若にベッドが軋んだ。
「ここで子供になるとかミラクルおきっ、…っ…ーっ!!!」
本日二度目の蹴り貰いました。ええ、息子に。声もなくぶっ倒れた俺の頭がみしりと悲鳴を上げ、だが息子も瀕死だし叫べないし俺いっそ気絶したいですが若がそんなこと許すはずもなく。
「お前とは長い付き合いだったが…残念だ」
「若の笑顔が十八禁…!」
許して若!という叫びも虚しく、俺をボコる若とそれでも若を襲いに行く俺という構図が出来上がったこの呪いマジ怖い。マジ怖い。