ぐしゃっと、踏み付けられた背中に目が覚めた。
「ぐえっ!ちょっ誰!若!?」
みしみし音を立てる背骨にうおおおっと悲鳴を上げれば無言で圧を増す背中の住人。あ、これ若より軽いから若じゃないわと思ったけど若じゃなくても痛い辛い苦しい助けて若!
「誰だ、てめぇ」
「通りすがりのナマエ君ですお願い退いて内臓出ちゃう!」
「通りすがってねぇよ人ん家の前で寝こけやがって」
「えココどこあだだだだ!」
容赦なく踏み躙られた背中がみしみし音を立てて終いにはちっちゃくしちゃいけない音がした。マジ誰ヤメテ!悲痛な叫びにクハハ、と愉快そうに返された笑い声。
覚えがある、覚えがあるぞこの笑い声…!
「ワニさんんんんん!!マジやめあだだだだ!!!」
あんた若より加減知らないんだから!ていうか昔アンタにボコられたのトラウマだから!!
「その阿呆ぶりでよく生きてられるな」
「今殺されかけてるけどねっ!!!」
お願いだから小首傾げながら殺そうとしないで。飴あげるからとかマジ死ぬとか色々叫んだ挙句、バナナ鰐の餌貢ぐからヤメテ!!と叫んだところでようやくその足が退いた。無残になった上着に痛む背中。マジ鬼畜。ワニさんガチひでぇ。幼女の様にふえぇぇと泣いてみたら思い切り踵落とし食らった。死ぬ。
「あ、ワニさん!丁度いいやちょっとドレスローザまで送ってくんねぇ?」
「ちょっとって距離じゃねぇなそれ」
「昨日カジノで全財産スッて帰れなくてさァ」
「…アバラスタくんだりまで来て何してんだてめぇ」
「てへぺろ」
ごす、と良い音起てて地面にめり込みました。マジワニ。
「や、トシトシの実探してたんだけどそこにカジノがあったからつい」
「トシトシの実だァ?」
「そうそう、知らねぇ?」
それでもなんだかんだ話を聞いてくれるこの人はツンデレなのでしょうか。
「知らねェよ。適当な船に潜り込ませてやるからさっさと帰れ砂が穢れる」
「優しさのせいかな涙が止まらない」
ちゃんとその後バナナワニの餌送りましたよ。ええ。ワニさんマジ怖いがくぶる。