一仕事終えて帰ってきたら、ローが俺の横吹っ飛んでった。比喩でなく。マジで。
は?と壁にめり込んだ推定七歳と三ヶ月のローがせき込むのを見て、真っ黒黒助になったヴェルゴを見た。は?
「何してんだ、ヴェルゴ」
「ヴェルゴさんだ」
「俺はお前をさん付けで呼んだことはない」
「そうだった、お前にさん付けされるなど願い下げだった」
何言ってんだこいつ。そんな目で見たら俺の横に竹が刺さった。うそやん、とその竹を見て、いつになくご立腹らしいヴェルゴに潜ったばかりの扉をもう一度潜ろうとしたら、最近反抗期のローがめり込んだ壁から起き上がった。丈夫な子だなと思いながら痛めつけられた姿にきゅんきゅんしてたらその目がちょっとビビりながらヴェルゴを睨み付けた。
「クソヴェルゴ」
がつ、と加減もなく蹴り上げられた顎。吹っ飛ぶ身体。ただし、俺のである。
「はあぁぁぁっ!?」
今言ったの俺じゃねぇよ!と叫べばヴェルゴが動きを止めた。そうだった、今殴っていたのはお前じゃなかった。よーしブッコロ。
「ちょ、ナマエさん!?」
「下がってろロー。なんか知らんがおまえの話は後だ後」
「俺は今ローの折檻中だ。どけナマエ」
「お前の頭の中一回見てみたいんだけど。なあなあヴェルゴ、今悪いのお前じゃね?お前だよな?お前のはずだ俺は断じて悪くない」
「狼少年という昔話があってだな」
「日頃の行いとでもいいてぇのかオイコラ」
今日という今日は我慢ならねぇと胸ぐらを掴み上げようとしたら上に何も着てなくて頭突きしたらこっちが痛かった。自滅して悶えてたらふんと鼻で笑われた。
この無表情で嘲笑える器用さマジいらねぇスキル。
ぜってぇタンコブ出来たわコレ慰謝料請求してやるとぐちぐち言っていたら俺の事など眼中にないようにヴェルゴがローに向き直った。
「さて、ロー。話を戻そうか」
「話しなんかしてなかっただろ」
「そうだった、お前には口で言うより体に分からせた方が早かったな」
「体に分からせるってなんかエロぅおうっ!!!」
ヴェルゴのかかと落としで床がめり込んだ。ぼっこりって、こいつ本当に人間かと疑いたくなるけどそれ以前にあれだ、あれ。
「殺す気かよ!」
「もちろんだ」
しれっとした顔で言ってのけたヴェルゴにひくりとこめかみが引き攣る。マジこいつ器物破損で若に怒られればいいのに。
「やはりお前が悪影響なのだろうな、死ぬかナマエ」
「おーおークソヴェルゴ!大人しくやられると思うなよ!」
そのまま暴れてたら帰ってきた若に二人して正座させられた。俺悪くない。濡れ衣、ダメ絶対。
「マジお前クソだわ」
「お前はクズだな」
「フッフッフ、外でやれ」
なんだかんだ説教喰らいながら結局ことの発端だったローの折檻忘れてるの黙ってた俺超優しい。これ終わったらローちゅうしてくれねぇかな。