汚れ仕事で訪れた繁華街で目についた、ちゃちなピアスだった。キラリと光るそれが不思議と目について、値札と貰ったばかりの汚れ銭と生活費を照らし合わせる。
ちょっと足りなくなる気もするが、まあ、いいか。
「ほら、これやるよ」
きょとん、と俺を見上げながら首を傾げた子供の額に、小さく小奇麗な紙袋を置いた。何だこれ、とそれが落ちる前に受け取った子供が紙袋と俺とを見比べ、サングラスの奥の瞳がぱちりと瞬く。
「誕生日プレゼントだ」
「…おれ、きょうたんじょうびじゃねぇよ?」
「なんだっていいじゃねぇか、んなもん」
ならなんかのご褒美だ、と言えば子供が納得していない顔をしつつ紙袋をのぞき込んだ。
「ピアス?」
「おう、いいだろ」
「ナマエが、おれに?」
「そうだ」
「おれ、みみにあなあいてねぇよ?」
「細かいガキだなァ。開けりゃあいいだろ」
素直に喜べよ、と生意気な頭を軽く叩けば、やっと、フフ、と照れくさそうな笑いが溢れる。
「プレゼントなんか、はじめてだ」
そいつァ良かったな、とタバコをふかせば、にい、と満面の笑みで子供が俺の手を握った。
「なんだ?」
「ありがと、ナマエ」
「…はは、どーいたしまして、クソガキ」
ぐしゃりと頭を撫で回せば、フフフフ!と小さな歓声が手の下から起こった。