随分と懐かしいものを、と生あくびをこぼしながらそれを眺めた。

暇つぶしにと漁っていたクソガキの書庫で見つけたそれは、後生大事にファイリングされ、本棚の片隅を偉そうに陣取っていた。

死んだ面も幾らかいるが、おそらくどこかで生きてる面もある。

海賊時代の懐かしい痕跡だ。

俺の所属していた海賊団の、懐かしい手配書が雁首揃えて保管されている。俺の手配書など、歴代のものが揃っているのだからとんだ酔狂だ。

クソガキに海賊時代の話をした記憶は無いが、まあ、同業者ともなれば知る機会もあったのだろう。

「フッフッフッ、苦労したんだぜ、それ」

「っ!」

唐突に掛かった声に思わず飛び上がると、にまにまと上機嫌なクソガキはそれすらからかう様に笑みを深めて俺の背中へもたれ掛かり手配書を覗き込む。

「居場所が分かる奴もいるが、会わせてやろうか」

「…どいつだ?」

「こいつと、こいつとか」

指さされた顔に思わず顔を顰め、勘弁してくれと手を振った。

昔の奴らは嫌いじゃないが、今更会いたいとも思わない。それこそ指さされた写真の奴など、会ったところで喧しくてかなわない。やれ薄情な野郎だ、やれ酒ばっか飲んでんじゃねぇ。言われる事は聞かなくても分かる。

「フッフッフッ…ナマエ、顔」

ついと指さされるが訳が分からず首を傾げると、一際楽しそうに笑い声を上げたクソガキはぴっと口元を指さした。

「ニヤけてるぜ」

「は」

咄嗟に口元を手で覆い隠すが、時すでに遅し。してやったりと言わんばかりのクソガキに、思わず顔を反らす。

素直じゃねぇなァなんて、からかう様に言うクソガキをちらりと睨みつけたがクソガキは何処吹く風といった風にその笑みを深めて見せた。

ああくそ。内心そう毒づいたが、正直認めざるを得ないところもある。そうだよ、昔の仲間に少し会いたい気もするよ。