「あんた達はあたしに甘過ぎるよ」

少しばかり眦を釣り上げ言えば、ニューゲートは人事だと言わんばかりに知らぬ顔を決め込んだ。少しばかり焦げ臭い風穴が空いた部屋の修復に駆り出された船大工は、慣れた手付きで応急処置を施していく。

「火ぐらい気にしてないって、何度言ったら分かるんだい」

「知らねェなァ」

「何十年も前の、ましてやあの子は知りもしない話だよ」

「何のことだァ?」

「ニューゲート」

「まあまあ、姐さん」

割って入ったサッチに、ようやくウェヌスは唇を引き結んだ。

「親父は姐さんが心配なんだ、そう言わないでくれよ」

「分かっちゃいるけどねぇ...」

だからと言って、子供相手に怒ることではないのだとウェヌスは釣り上げていた眦を困ったように下げた。

「息子だろうと容赦はしねぇよ、テメェの女守って何が悪ィ」

「甘いこと言ってごまかさないでおくれ」

「本当のことだろうが」

やれやれと肩を落としたウェヌスにニューゲートは笑い、サッチも慣れたようにデザートの誘いでウェヌスの機嫌を取りにかかった。ひょっこりと顔を出したイゾウが、エースは無事に拾われたと笑いながら寄ってきたころには、ウェヌスも困ったように笑うだけだ。

「甘やかされ過ぎるのも、辛いねぇ」

仮面を被り直しながら、ウェヌスはサッチが差し出したキャンディーを一つ頬張っておいた。