ふと刺すような寒さの向こう、分厚い雲の広がる空を見上げニューゲートは白い息を吐きながらわずかに目を凝らした。

「…あァ?」

何か飛んでくる。黒点のようなそれは随分な速さで、確かにこの船に向かって飛んできている。砲弾、にしては妙だし、何よりまずデカい。ざわりと息子たちも騒ぎ出すころ、自身の体躯と相違なさそうなそれに長刀を握りしめてはみたがそれが何か理解した次の瞬間には思わず目を見開いていた。

「………!」

「………!!」

すれ違いざまにばちりと絡み合った視線。それは、飛んできた勢いでもって流氷を割り、船を揺らすほどの大きな水しぶきを上げ海に沈んでいく。

「おいおい…泳げねぇぞおれァ…!」

慌てて覗き込んだ水面の下は気泡と藻屑とが邪魔をし影をとらえさせない。何人かの息子たちが流氷のちらつく海に飛び込もうかと躊躇を見せるが、しかし飛び込むより先に水面からなにかが浮かび上がってくるのが見えた。

「梯子を下ろせ!」







「いいところにいてくれて助かったよ」

甲板に引き上げた女は、疲労の色濃い顔色で笑って言った。水を滴らせながら甲板に突っ伏し、肩で息をする姿にいったい何人の男が頬を染めただろうか。

ニューゲートは引き上げる際に脱ぎ捨てていた外套を剥き出しの肩に掛けながら、氷のように冷えきった体を支えた。血の気を失った唇は怪しい色香を放ってはいたが、それ以上に痛ましい。

「んなこたァいいから早く乾かして暖まれ」

「はは、久々の再開で手間かけさせて悪いね」

「」








「ニューゲート…」

「さむい」

熱い息だった。熱く、上擦った息が胸元に掛かり、腹を擽り、腰を掠め音を立てて崩れ落ちるのがまるでコマ送りのようだった。

「…っ、おい!!」

慌てて抱き抱えた身体は燃えるように熱いのに、