「おれとウェヌスが初めて会ったのは、おれがまだてめぇの船を持ってねぇ頃でなァ」

頷くように相槌を打ったエースの横で、また始まったと言わんばかりに苦笑を浮かべたマルコとサッチが互いを見合わせた。酒で喉を湿らせ、まァ聞けよとニューゲートが笑う。

「ウェヌスは鳴り物入りでなァ、ルーキーの頃から名が売れに売れてた。傾国のウェヌス。どいつもこいつも手配書を欲しがったが、おれァあんまり興味がなくてな」

周りのヤツらが余りに騒ぐから、名前も手配書の写真も知っていたが気には止めていなかった。そんなある日に、早くもその名を轟かせ始めていたロジャーの一味とかち合い小競り合いとなったのだ。

目と目があった瞬間、がつんと頭を殴られた。

比喩でなく、武装色の覇気を纏った右手がニューゲートのこめかみを打ち抜いていた。

「信じられるか?ヤツらの中で誰が一番血の気が多いかと聞きゃァ間違いなくウェヌスだと返ってくる。面はいいがとんだ暴れ馬だ!」

だがしかし、火花の散った脳みそがそれにやられたのもまた事実。

確かに一線を画す美人だったがそれよりも、怯みのない勝気な目付きだとか、快活に笑った顔だとか、海に放り出された仲間をいの一番に助けに飛び込む肝だとか、興味を向けるには十分すぎた。

結局小競り合いは小競り合いのままで終わったが、