度々新入りの子供を見かけるようになって、どことなく、見覚えのある子供だと思った。

そうか?と首をかしげたのはニューゲートだ。顔に覚えがあるわけでも、ましてや当人に会ったことがあるわけでもないとは思うのだがウェヌスはどことなく新入りの子供に既視感を覚えた。昔の仲間に似ているかと言われれば、そんな気がしなくもない。だが誰かと言われれば当てはまる顔が浮かばない。

そんな喉に骨が刺さったような気分で、毎度お馴染みとなりつつある件の子供によるニューゲート襲撃を眺めていた。舐めた酒はアルコール度数が低いという意味でウェヌスには甘口だが、最近は酒の肴に事欠かない。件の子供は随分と面白かった。

ぽっちゃんと水しぶきを上げて海に落ちた子供をにこにこと眺め、ロケットに収まった写真にふと視線ををやる。古びた写真だ。昔の仲間に知られれば、そんな物と馬鹿にして笑われるだろう。

一枚は肩を組んで笑っている二人の男。快活に屈託なく笑う男の写真を見ると、ウェヌスはどうしようもなく恋しくなるのだ。海賊王と冥王。ゴール・D・ロジャーとシルバーズ・レイリー。かつての仲間である。

わあわあといつだって賑やかな息子たちが海に落ちた子供を拾い上げる様をみて、ふともう一度写真を見た。かつての仲間が至極嬉しそうに名前なら決めてあると言っていたのを思い出す。男の子ならエース。女の子ならアン。

「…あ」

思い当たった仮説に、まさかなぁとは思いながらウェヌスは酒をなめた。

「グラララ…ウェヌス、飲むならこっちで飲みなァ」

「おや、遊びは終わったのかい」

「今日は終いだァ、たまにはゆっくり飲もうじゃねぇか」

ああいいね、と昨日も聞いた誘いに頷いて腰をあげる。

男の子ならエース。あの子もエース。

まさかなぁとは思いつつ、まさかだろうなぁとも妙な確信があった。寄り添うように腰を下ろしたその場で、久方ぶりに甘えるようにニューゲートの肩に額を寄せれば当たり前のように抱き寄せてくる腕。

「今日はサービスデーかァ?」

「ふふ、人恋しい気分なのさ」

あんたはイイ男だねぇと呟けば、当たり前の顔して当たり前だとニューゲートが笑って見せた。