「なんだい、攫ってくれるのかと思ったのに」
じゃあね、なんてウェヌスは軽やかに駆けて後ろ髪をなびかせる。
「…ああ、くそ。慣れねぇなァ」
赤い唇と柔らかな手と寄せられた温もりと。
今頃になって煩い心臓に、ニューゲートは深く息を吐いて船に飛び乗るウェヌスの背を見送った。