ルージュのことも、お腹の子のことも知っていた。それをガープに頼んだことも知っていた。

ロジャーの考えは当時も今も分からないけれど、あたしといてもレイリーといても他の奴らでも、きっと未来は海賊でいることしか出来なくなるから、これで良かったと言い聞かせた。

あたしがもっと頼りになるなら、ロジャーはあたしに任せたんじゃないか。そんな一抹の自責の念は、きっと傲慢だと言い聞かせた。子供が幸せなら、それが一番いい。生きていればそれでいい。そう言い聞かせたのに。

「珍しく機嫌が悪いじゃねぇか」

「そうかい?普通だよ」

「おめぇの嘘はわかりやすいなァ」

宴をぼんやりと眺めながら、グラスの酒を一気に煽る。ほら、やっぱり。ニューゲートの言葉に肩を竦めた。

「自分にね、腹が立つのさ」

「あいつのことか」

「ガープにも腹が立つし、ロジャーにも腹が立つ」

「おめぇはガキに甘いからなァ」

「煩いよ」

両手をあげたニューゲートの徳利を奪い取り、煽る。ため息混じりの吐息。

「出しゃばってるだけかねぇ」

「大切なんだろ、それだけ」

「…そうだねぇ」

ウェヌスのグラスに酒を注ぎ煽るニューゲートは、やれやれと言いたげに少し笑った。

「どうしようが誰もおめぇを責めねェよ。出来ることにも限度があるんだ。おめぇがいい女なのはよく分かってらァ」

「だから、そういうところが甘やかしすぎなんだよ」

「おめぇはてめぇに厳しいから帳面が合うだろ」

グラグラと豪快に上がった笑い声に、どこか釈然とせずに徳利を煽った。

「いいじゃねぇか。あいつはもうおれ達のガキだ。これからおめぇが甘やかしてやりゃァいい」

「あんたは甘やかさないのかい」

「オヤジってのァ雷落とすのが仕事だって相場は決まってらァ!」

「ふふ、なんだかんだ甘いくせに」

くすくすと、肩の力が抜けて笑うとニューゲートもまた笑みを深めてウェヌスを見た。

「それにおれァ、誰かさんを甘やかすのに忙しいんでなァ」

「まったく…甘え癖がついちまって困るよ」

「いいじゃねぇか。おめぇが笑ってりゃ何よりだ」