ぎいぎいと船体が軋み、見張り番の息子たちの控えめな談笑の声が夜風に乗って耳に届く。 月明かりがキラキラと海に輝く夜の海が、昔からたまらなく好きだった。 「おめぇは意地っ張りだなァ」 並んで、さして興味もなさそうに海を見るニューゲートが言った。 「なんだい、藪から棒に」 「ふと思ったんだよ。おめぇは昔っから意地っ張りで、毎度意地だけで無理を通しちまいやがる」 「説教ならいらないよ」 「褒めてんだよアホンダラァ」 ぽんと、その大きな手がウェヌスの頭を叩くように撫でる。風に乱れた髪を整え、頬にかかるそれを耳に掛けた。 月明かりが照らす古い火傷の痕はお世辞にも綺麗とは言えないが、それでもニューゲートの指先は割れ物でも扱うように優しい。海賊の男にはとても似合わないような手つきが、この数十年でようやく板についてきたようだ。唐突に、昔のぎこちなかった手つきを思い出して小さく笑った。 「おれァまだ頼り甲斐のねェ男か?」 ちらりと、見やった顔は薄明かりでもはっきりと見える。意地の悪い、からかう笑み。 「意地の悪い聞き方をするね」 「おめぇは素直に甘やかされねぇからなァ」 「そういうとこ、あんたの悪いとこだよ」 「グララララァ…」 満足げに笑ったニューゲートの顔に、ウェヌスまで釣られて顔が綻ぶ。どちらかともなく身を寄せ合い、ウェヌスの肩を温めるように回ったニューゲートの手。 「そりゃあ、やっぱり怖いんだけどね。少しばかり」 「あァ」 「あんたがいるから、意地も張れるんだよ」 そっと寄せた胸元の温もりが、夜風に冷えた頬に心地よかった。 |