「気になるなら謝っちまえばいいのに」

そう言われ、思わず苦い顔をしたエースにリーゼント頭の男は笑った。

ちらちらと遠目に眺めていたのを見透かされたようでどうにも始末が悪い。謝らないと啖呵を切った夜からあの女性は変わった様子を、それこそ怒った様子すら見せない。

それはまるで歯牙にもかけられていないようで、我儘な子供そのままにエースは唇を尖らせるしか出来ずにいた。

そんなエースを見かねたのか、お節介な男はからかう様にエースの隣に腰を下ろして言ったのだ。

「姐さんはガキに甘いからな、怒りゃしねぇよ」

それは子供扱いされていることに違いなかったのだけれど、エースは怒る気にもならすちらりとリーゼントの下のしたり顔を見る。

にんまりと、癪に障るしたり顔だ。

「それともあれか?怒られたいとか!」

「はっ?」

「姐さんに怒られたいやつ結構いるんだよなぁ。お前もそのクチだろ?」

「ばっ、んなわけないだろ!」

「ははは!照れるなよ!」

「違う!!」

「ははははは!」

ぎゃあぎゃあと、余程喧しかったのか集まる視線にはっと気が付きエースは押し黙る。頬に集まった熱はそれだけでは冷めてくれなかったけれど、はたと、その視線の中にあの女性がいることに気がついて更に頬の熱が集まる。

ぷいと愛想も素っ気もなく顔を逸らしたのは、やはりいい気がしなかっただろうか。そうは思っても、今更どうとできることも無くエースはむっつりとふてくされた顔のまま背を向けた。

「姐さん、マッチが切れたって言ってたな〜?次の島までまだかかるのになァ〜?」

わざとらしい声に、唸る。