見つけたのは、まるで絵画のように美しい写真だった。

俯きがちな顔にかかる艶やかな髪の筋と目元の陰影とが一際目を引いて、緩く弧を描く唇と伏せられたまつ毛がどこかで見た聖母のようだと思ったが、しかしどこか毒婦のように危うげにも思えた。

決して多くはない語彙でぴたりと当てはまる形容区を見つけようとして、断念したエースはぽかんと口を開けてその写真に見入る。

宝物庫いっぱいに山積みされた宝はこの写真への貢物のような気にすらさせられた。

色気よりも食い気が勝るエースですらそう思ったのだから、女好きな男ならそれこそ水面に恋焦がれたナルキッソスのように見惚れて心奪われるかもしれない。

「綺麗だよな」

ただありのままをそのまま述べたサッチが、ぽんとエースの肩を叩いて言った。

「っ、サッチ」

「わかるわー、俺もここに来る度つい見ちまう」

「これ、なんなんだ?」

「姐さんだよ、姐さんの手配書。最初のな」

思ってもみなかった言葉に思わず目を見開いたエースに、サッチはいたずらにニンマリと笑みを深めて写真を指さして見せた。

「傾国のウェヌス。その美しさに国が傾いたってぐらい、そりゃあもう姐さんは美人でなァ」

「傾国ってそんな意味なのか」

「知らねぇのかよ!?俺らの年代じゃ知らねぇヤツはいなかったってのに!」

大げさなほどに驚いて見せたサッチが、信じられないと言わんばかりにエースを見つめた。

まん丸に見開かれた目は驚きと、勿体ないとでも言いたげな哀れみとが溢れていたが、サッチはエースの肩を徐ろにぽんと叩いて言ったのだ。

「オヤジと姐さん、多分お前が思ってる以上にヤベぇからな」

「え」

「考えても見ろよ。最強の男と世界一の美女が両親とかねぇだろ普通。」





「オヤジが一等大事にしてるお宝だ。傷つけんなよ」