海岸線に白い鯨を待たせ、白い砂浜に、真新しい足跡がついた。
慣れぬ人の気配に驚いたカニが、慌てたように逃げていく。
古く朽ちた難破船の残骸が苔むし、波が静かに打ち寄せていた。
羽織ったコートの裾が、歩みと風とに揺らめいて影を落とす。
昔ニューゲートとともに打ち上げられた残骸は、魚の巣となり、鳥の羽休めの場となり、それでも確かな名残を残していた。
「ここだったとはなァ」
どれほど歩いたのか。小さい島の森奥深く。ニューゲートが目を細め、大樹を見上げ、視線を落とす。
果たしてどれほどの樹齢だろうか。不自然に、斜めに生えた一本の大樹の根元には、まるで宝を隠すように蔦が覆い茂り静かに沈黙している。
一本の蔦をより分けたそこから覗くのは、標石だった。
ぶちりぶちりと蔦を切り落とし、ようやく石肌が顕になる頃、一羽の小鳥が興味深そうにニューゲートを見下ろしていた。
風化し薄れた文字。荒削りの石肌。墓石ではない。きっと、宝も埋められてはいない。それでよかった。長い長い月日を越えて、この石は確かに役目を果たしたのだ。
書かれていた文字に一人笑みを零し、腰を下ろしたニューゲートは静かに二つの盃を並べ、掲げ、飲み干した。
talk over old times