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その根性を叩き直して貰えと放り込まれた部隊だった。

良くも悪くもマイペースが過ぎる性格が規律を重んじる海軍向きでないと命じられた、厳格と言われる中でも群を抜いて厳格と名高い部隊への移動。その隊を率いるナマエ中将はあのガープすらもゲンコツで黙らせるというのだから、兵の中ではある種の鬼門のような扱いですらあった。自他ともに対し厳しく、海兵の鏡だとか、なんとか。

同僚達に同情の目すら向けられたボルサリーノはしかし、ナマエを前にへらりと笑った。

「電伝虫が壊れっちまいやしてェ〜、急ぎ報告に戻った次第であります〜」

「いやそれ黒……………報告を」

「例のルーキー以下五十二名の捕縛は完了しましたがァ、どうしやすかァ〜い?」

「あー…、センゴクの部隊に引き渡す準備をしておけ」

「了解しやしたァ〜」

目元を揉みほぐすように手をやりながら俯いたナマエに、ボルサリーノはこてりと首を傾げて見やる。

噂に聞いた堅物であるナマエは、確かに堅物であった。頑固で過激で、融通が聞かない。厳格を絵に書いたような男だった。今も電伝虫越しに自由が過ぎるガープを怒鳴りつけていたばかりだ。だがしかし、噂というのはどこかしら背びれ尾びれとつくもののようで。

新兵の間では鬼かなにかのように恐れられていた男だが、おつるに言わせれば、苦労を背負い込む損な質。ガープに言わせれば口喧しい頑固者。センゴクに言わせれば海軍の防波堤。ボルサリーノに言わせれば、不器用なだけの優しい男だった。

ボルサリーノを見る、呆れ果てたような視線の奥には

「」





「…よくやった、ボルサリーノ」

ぽんと、叩かれた肩と労う言葉にボルサリーノの頬が緩んだ。恐らく、ガープに毒されて基準がおかしくなっているだけなのだけれど、嬉しいことには違いなかった。