■ 俺の番はあんがいかわいい
顔を合わせる度に睨み付けられ威嚇され敬遠されていたのは、照れ隠しだったと思えば可愛い、と言えなくも無いのだろうか。ちょっと俺の感性では理解出来ない。
この度番となった、同じ系列部隊のこの男。ことある事に俺の背中を狙っていただけになんとも複雑な気持ちである。
「…………」
「…………」
共に朝を迎え顔をあわせても、まるで睨み合うような雰囲気のどこに可愛いげないし甘さがあるというのか。
「あーっと、先に聞いときたいことが幾つか」
「……なんじゃあ」
「発情期の頻度と、欲しい子供の数と、殺意の有無…は分かったからその拳下ろしてくれる?」
「妙な事ほざきおって…!」
「だって番申請出しとかないと、発情期どうすんの」
「んなもん出さんでええ!!」
いいのか、とぱちりと瞬き。同じ部隊の番持ちなんて、早々に申請して定期的な休みをぶんどっていたのだが、いいのか。周期によっては他の隊への異動もあるだけに、俺はどちらでもいいのだが。
「…ちょっと待て、お前、長期遠征でも毎日いたな。発情期は?」
「んなもん…!!」
かっと怒りだかなんだかに赤くなった顔。しかし怒鳴りつけようとした顔は何かを言い淀むと、唸るようにその顔を手で覆い隠した。
「…サカズキ?」
「貴様のせいじゃけぇの…」
ぎろりと、赤犬というより赤鬼といった形相が指の間から俺を睨みつけてひくりと頬が引きつった。
まぁ要約すると、今までは気合いで発情期を無いものとしていたのに、俺との相性が良すぎたらしく気合いだけじゃどうにもならなくなったんだとか。
だというのに俺は誘発されずにけろりとしているものだから、情けないやらなにやらでいっそ殺しにかかっていたんだとか。
俺が誘発されなかったのは開発中の抑制薬の治験を引き受けていたからなのだが、恥じ入りながら話すサカズキが予想以上に可愛かったのでとりあえず黙っておいた。