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制作メモ&小ネタ集
――――ヘイダルとリドワーンに捧げる
アシャ帝国、という名前はテロイド砂漠周辺に住むアシャ人たちを魅了する。
砂漠に簡易な住居を構えて部族闘争に明け暮れるか、もしくは都市に従属していち市民として細々と生きてゆくのか、いずれにせよ、彼らが「国民」となったのはアシャの時代になってからであり、長い歴史を辿っても、彼らの上に共通の王が立つことは無かった。
アシャ建国の王ハウディはシーマファ出身の商人であった。
シーマファ市長に仕える身でありながらその政治的権威は強大で、市民からの支持と信頼を集めたのはもっぱらハウディの方であった。
彼は誰もを愛し、常に市民を思い、街のすべてに献身していた。
彼の言う「市民」とは、城壁に囲まれたシーマファの都市部に暮らす人間、つまり戸籍に管理された政治的意味での市民だけを指す言葉ではなかった。彼にとっては、そこには不毛の土地で貧しく惨めに生きている少数部族や最貧民層、シーマファ入城を許可されない移民や浮遊児たちのことも含まれる。
ハウディの抱えていた盗賊出身の兵士たちに関して、彼らを強く批判する学者は多い。
しかし、そういう国民は自分達の王の詳細な人物像を知らないでいる。
ハウディが目を向けていたのは自分の地位や財産ではない。
彼はテロイド砂漠の、ひいては帝国領全域で暮らすすべての者のために身を尽くし、特に貧民や孤児を手厚く扶養し彼らを救済することが自分の使命だと信じていた。
勿論テロイド砂漠の盗賊達のような悪党であっても、飢えや貧しさに苦しんでいる限り、ハウディにとっては我が身を削ってでも助けるべき「市民」であったのだ。
ハウディ王について深く知る国民は、シーマファ市民を除いてはごく少ない。
私は彼の活動を見届けた者として、アシャの歴史の語り手としてこの本の執筆にあたる。
出版の援助をしてくれる事となったアッズィム商会に感謝の言葉を述べたい。
この本を通して、多くのアシャ国民が自らの王を知り、愛してくれることを願う。
アシャムスと、アーシャ=ハウディ王の名において。
すべての国民に幸多からんことを。
(アッズィム商会版 『アーシャ=ハウディ建国紀伝』著者による前説より抜粋)