ニューセレナで程良く飲めたが
妙な話のおかげで後味が悪く
桐生は他所で少し飲もうと
神室町を出ようとした時だった



「桐生さん!」



特徴のある声が背後から聞こえ
振り返ると、秋山が
こちらへ向かってきていた

秋山は大量にお酒が詰め込まれた
コンビニの袋を両手にさげている



「秋山か・・・、なんだその酒は」

「あぁ、これですか!
元ホームレスのちょっとした
”たしなみ”ってヤツですよ
桐生さんはどうしたんですか?
いまからどこか行く予定でも?」

「まぁ、ちょっと飲みにな・・・」

「お、じゃあ僕も約束の時間まで
ちょっと余裕があるんで
ニューセレナでも寄り・・・」

「いや、別の所にしないか?」


ニューセレナであった出来事を
察されたくないのもあり
桐生はひらりと身を躱すように
違う場所へと促した

秋山は頭上にハテナを浮かべるが
なにかあったんだろう、と
いうことはなんとなく感じ取る



「じゃあ、とっておきの場所で
二人夜空でも眺めながら
ロマンチックに晩酌でもしますか」

「ロマンチックは必要ねぇだろう・・・」

「いや、意外と似合いますって」


ハハハッと笑う秋山に
勘違いされなきゃいいがな、と
呆れた笑いを向けると
片手に持っているビニール袋を
ひとつ受け取り、その場所へと向かうことにした









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