「連絡もしてくれないし…
どこに居るのかも分からない…
ずっと気になって…悩んで、
それで会いに行ったんですっ…」







次から次へと出てくる





「桐生さんが好きなのは
私なんかじゃないってこと…
最初からも分かってましたし
叶うわけないとも思ってましたっ…」



自分の言葉が辛くて悲しかった















「それでも私は桐生さんが…っ!」










一瞬の出来事だった





私が一言、言い放った瞬間
胸元を掴んでいた手が離れると
一瞬で両腕に抱かれ、桐生さんの
胸元にひき寄せられていた




なにが起こったのか
すぐに理解できなくて
私の頭の中は真っ白になる








「き、りゅ…さ……?」






呆然と立ち尽くし顔を見上げると
桐生さんの表情はいつもの
穏やかで真剣な表情に戻っていた



そして、こう呟く















「…俺は、お前が好きだ」


















「えっ…」




なにを言っているのか
それもすぐに理解できなくて

それでも、桐生さんは続ける







「お前は俺のこと"好きだった"…のか?
…それとも、このままこれからも
好きで居てくれんのか?」





その言葉にドキっと、胸が鳴る




だが桐生さんには相手が居た
まゆみ、と呼ばれる女性だ



ドキっとした胸の高鳴りは
すぐさま鳴り止んだ







「…で、でもっ…桐生さんは相…」

「どうなんだって聞いてんだ」



力強く見つめてくる瞳に
私は押されて弱々しい声で囁く






「わっ…私は……好きで
居たいです、…できるなら…」




困惑し、おどおどと答える








すると桐生さんはゆっくりと
顔を近づけ、そっと
軽く唇へと口付けた





「ん…っ?!」







初めての口づけに
唇がビクビクと震える










唇がそっと離れると
ドキドキと脈打つ胸を抑えた




「…っ…ど、どうしてっ…
相手が居るのにキスなんかっ…」

「お前、まゆみが俺の
恋人だと思ってんだろう」

「…はい」

「…あいつは福岡にある
山笠組組長の娘だ
恋仲になるような関係じゃない」

「…え、…そ、そうなんですかっ…?」

「俺は、お前が元々好きなんだ
他の女と付き合うつもりはねぇ」

「き、桐生さん…」









桐生さんの言葉が
やっと心の奥まで響く



"好き"という私に向けての言葉が
なにより嬉しくて、安心して
さっきとは違う涙が溢れてくる






「…っ…桐生さん…」

「辛い思いさせて悪かったな…」





桐生さんは何度も何度も
優しく私の体を抱きしめてくれた







その胸の中は温かい




そして私の知っている
桐生さんの温もりだった








私はあの時、福岡に行って
良かったとつくづく思えた


もしかするとあの時
福岡へ行っていなければ
"好き"だということに
気付けなかったかもしれないのだから






私は会いに行って良かった
好きでいて良かった

強く、そう思った









「…好きです、大好きです」

「あぁ…俺も好きだ…」

「……鈴木さん…」

「…おい」







今はそんなツッコミさえも、
桐生さんの温もりなのだった









_________________________





一方その頃、秋山は…






「やっぱ両想いでしたか〜
まぁ、分かってたんだけどね」

「あ、社長〜
こんなところで何してるんですか?
早く部屋に入りましょうよ」

「お、花ちゃんか
今は無理かな〜、二人の
邪魔しちゃ悪いからさ」

「二人??えっ、あの二人
付き合ってるんですか?!」

「ま、そういうこと〜
俺も両想いの相手いないかな〜
ねぇ花ちゃん、俺どう?」

「え、どどどどどどうって…
わ…私は別に…いいですけd」

「だめか、花ちゃんの恋人は
ご飯とおかずだもんね!
あはは、ごめんごめん…
って…あれ、花ちゃん…?」

「もう知りませんッ!!!!
私はスタミナ牛丼定食デラックス
買ってきますから!!」

「あ、じゃあ俺のもよろしくね〜」







他人には鋭く、
自分のことには疎い男、秋山







_____________________




※あとがき


匿名の方からのリクエストで
桐生夢でした!


大変遅くなってしまいました(泣)
申し訳ありません!

文章力の無さの自分のネタの無さに
絶望しながら書いていましたorz
ただ、シチュエーションまで
リクエストくださったので助かりました!
もうひとつシチュをもらっているので
それも後々アップできたら、と思います!




最近本当に更新ペースが
落ちてしまっていてすみません…
そんな中でも拍手やメッセージを
くださっている方々に、少しでも
喜んでいただけるように
頑張っていきたいと思います

どうぞこれからもよろしくお願いいたします!


7/19 6:03




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