胸元に顔を当てるよう、抱き寄せられる

男の身体というのはなぜこんなにも
厚くがっしりしているのだろう
いや、全員がそうであるわけもないか

そう考えながらなまえは一時
桐生の腕に包み込まれていた



「・・・桐生さん」

「なんだ?」

「・・・好きです」

「・・・あぁ」


桐生は、知っている
といわんばかりの顔をすると
更にきつく抱きしめる

なまえの胸は高鳴り、鼓動が早くなる
顔を見上げると、すぐそこには桐生の顔があり
その力強い瞳を愛おしく見つめると
桐生は火照った唇をなまえの唇へと重ねた

口づけは思っていたよりも深いもので
息苦しさのあまりなまえは唇を離そうとすると
桐生はそれを許すことなく追い詰める


「っ・・・」


ゆっくりと、口内を味わうように
時に激しく舌を捻り込んでは絡ませる


「・・・はぁっ・・・き、りゅ・・さっ・・・」

息使いに限界を感じたなまえは
涙目で桐生に訴えると
桐生は長い時間口づけていた唇を離した
二人の唇には銀色に光る糸がかかる


「はぁっ・・・はぁっ・・・こ、殺す気、・・・ですかっ・・・」

「・・・悪い、そのつもりでしていた」

「・・・っ・・・」



なまえはぐったりと桐生の胸にへたり込むと
桐生はその頭を大きな手で優しく撫でた


「・・・なぁ、なまえ」

「どうしたんですか・・・?」

「・・・”熱く”ないか?」

「・・・?そう、ですね・・・ちょっと”暑い”・・・かも」

「そうか、じゃあ脱げ」




―えぇ!?


目を大きく開かせて驚く
それと同時に更に胸は高鳴る

この服を脱ぐとどうなるかなんて知ってる
神室町で生きてきた人間だ
それぐらい、分かってる


「ほら」

急かすように桐生はなまえの服を引っ張る


「ちょ!?ちょっと・・・・待ってっ!」

「なんだ」

不機嫌そうに桐生は眉間に皺をぎゅっと寄せる


「桐生さん・・・あなた病み上がり
 ってこと、忘れてません?」

「さぁ、なんのことだ」

「なんのことって・・・さっきまでベッドで
苦しそうにしてたじゃないですか・・・
何のために私をここに呼んだんですか・・・」




そう、私は看病しにきたのだ。と
なまえは先程まで高熱を出していた
桐生をじろじろと見やる

しかし桐生はそれを無視するかのように
なまえの服を手際よく脱がせていく


「俺はそんなヤワな人間じゃない」

「そっ・・・そういうことじゃなくって・・・!」

結局全身を脱がされてしまい
なまえは、はぁ・・・と項垂れた

桐生も同じように自分の服を脱ぐと
背中に掘られた大きな龍の刺青が
私の目の前で姿を現した


「・・・刺青、凄い・・・」

「そんなに珍しいものでもないだろう」


確かにそうだった、なまえは今までに
極道の様々な個性溢れる刺青を見てきた

龍、不動明王、虎、般若、麒麟

男たちの背中に背負うものは
力強く生き生きと描かれていた


数年前までは極道なんてなんの関係もない
なまえはただの平凡な一般人だった

そう、考えると空虚が押し寄せ
目の前にいる桐生が遥か遠くに居る気がした


「・・・私なんかが、桐生さんと居ていいのかな・・・」


その龍の刺青を指でなぞる様に触れるなまえに
背中を向けていた桐生は体を正面に向けた


「俺が求めたんだ」

「えっ」

「お前はもう・・・俺のもんだ
 離れようったってそうはさせねぇ」

「そんな・・・私は別に離れようだなんて」

「・・・なまえ、好きだ」

「っ・・・!・・桐生、さん・・・」


改めて面々と向かって伝えられるその言葉に
なまえは驚きを隠せずに感極まってしまう

桐生は黙ったまままた力強く抱きしめる
壊れないように、大切に


そしてベッドへとなまえを押し倒した



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