体育館を横切った時に偶々見たかつての仲間の、キセキの世代のバスケは、やっぱりそれは見るものではなかった。

光に憧れた少年は他人を見下す発言が多くなり、かつての頼れるNo.1シューターは己の信じたスタンドプレーを貫き、体格に恵まれ、並外れたパワーを持った彼はバスケは欠陥競技だと吐き捨て、全ての先を見据えた彼は勝利が全てだと言い切り、かつての光はそのまばゆい輝きを失った。

こんなはずじゃ、なかったのに。


気づけば僕は、その場を走り去り、家の近くのストバスコートへきていた。ガムシャラにボールをゴールに投げ、想いをぶつける。けれど、ボールはゴールに入らない。僕にゴールを決めることはできない。僕は影だから、光達を際立たせることしか出来ないから。


投げたボールはリングに届かず、重力のまま地面に落ちる。軽く弾んだボールは僕の視界の端に消え、当たりが静寂に包まれた。


「…っちがう、」


こんなのじゃ、ない。



「だから君が、変えるんだ。黒子君」


返ってくる筈の無い返事が返ってきた。顔をあげると、ボールを持った名前さんが、コートの入り口に立っていた。名前さんは僕に手を振って、そのままシュートの体制に入り、ボールを投げた。投げたボールは綺麗な弧を描き、ストンとネットをくぐった。


「こんなはずじゃ、ないんでしょう?」
「…僕には何もできません」
「そうかな?」


フッと僕の視界が暗くなる。名前さんが僕の前に立ち、僕に強い眼差しを向けていた。


「君にしか出来ない事が、必ずある」


確信に満ちたその言葉。その言葉は僕の心を動かすには十分だった。


「2日間、僕に時間を下さい」



答えを見つけてきます。そう言えば、彼女は目を一瞬だけ見開いた。やがて彼女はうんと頷き、Vサインを掲げて、悩め少年、と満足そうに笑った。

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