僕は宣言通り、2日間必死で悩んだ。今のこと、これからのことを。登下校の時も、授業中も、昼休みも、本を読んでいる時も、家に帰ってお風呂に入ってる時も。使える時間を全て使って悩んだ。悩んでわかったこと。やっぱり僕は、バスケが好きだ。



*



2日経った今日、僕は屋上へ向かった。数日振りの屋上は誰もいなく、爽やかな風が辺りに吹いていた。

あの日、彼女が立っていたフェンスによじ登り、その上に座り込む。ふわふわと心地よい風が髪を靡かせた。

目を伏せ、彼女が歌っていた歌を思い出しながら小さく口ずさむ。そうだ、道は自分で開けないと。


歌が終われば、小さく拍手が聞こえた。ばっと振り返ると、拍手の主、名前さんが此方に歩み寄って来た。フェンスから飛び降り、彼女に向き直る。


「…名前さん、僕は、キセキの世代を倒して、もう一度バスケをします」
「答えは出たみたいだね」

お疲れ様。ふわふわと頭を撫でられる。あぁ、本当に彼女は神様のようだ。名前さんに腕をひかれ、彼女の胸の中に収まった。彼女の身体はとても冷たく、けれど胸の中はとても暖かくて、今まで僕の心の中にあったモヤモヤが、ゆっくりと溶けていくようだった。


「きっとこの先、君はまた光に巡り会うよ」
「…不思議です。貴方がいうと、本当にそうなる気がします」
「恐れず進め!君の世界が待っている!」


名前さんに肩を掴まれ、そのままグイグイと入り口の前まで押される。


「えっ、ちょ、」
「黒子くんが頑張っていることは見てたから」
「あの、」
「これからも見てるから」
「名前さ、」
「君ならできる!」


とん、と力強く背を押される。前に体重が掛かって倒れそうになるのをなんとか踏ん張り、やめてくださいと振り返る。けれどそこにさっきまでいた彼女の姿はない。


「…ありがとう、ございます」


いつも見てくれている彼女に、最高の感謝を。誰もいない屋上に頭を下げ、僕は屋上の扉を静かに閉めた。

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