その日、友達がどうしてもバスケ部の 練習を見に行きたいと言って、私と2人で体育館へ行った。周りには、選手のファンの女の子達が黄色い悲鳴をあげ、群がっていた。
あぁ煩いなぁホントに。思わず眉を潜めた。その悲鳴に呆れていると、友人もそのギャラリーの中に混じり、ファンの1人となって悲鳴をあげる。友人がちらりと私を見て、小さく親指を立ててくれた。私も友人に向け、小さく親指を立てた。
ここ、帝光中のバスケ部の一軍のメンバーは、とても人気があるらしい。何でも、モデルもいるらしく、校内でも様々なファンクラブがある様子。
私はそういった類のことは好きではないので、帝光中バスケの話は極力避けている。耳を劈く奇声だとか、嫉妬に狂った時のあのしぶとい執念。全てが馬鹿らしいのだ。別に友人を否定する訳ではないのだが、兎に角、面倒な事と目立つ事が私は嫌いなのだ。なんていいつつ。最近では、バスケの話もするようになってるし、恋に翻弄されているよなぁなんて1人笑みを零した。
体育館から少し離れ、私は1人、前と同じ体育館裏の木陰に座り込む。あぁ疲れた。耳がまだキンキンしている。
体育館裏の開いているドアが開いていて、中ではバスケ部がキュッキュと靴を鳴らして練習している。やっぱり青春っていいもんだな。
気を入れなおし、自分の頬を叩く。すう、はぁ、と深呼吸をし、自分の気持ちを整える。そして、体育館のドアから、そっと顔を覗く。
「…わぁ、」
圧巻された。風のように走り、素早くパスを回し、綺麗にシュートを決める。一人一人の力強さと、その気迫に思わず鳥肌が立った。流石は部員100以上を誇る強豪校だ。
ふと、壁の方で1人、周りを見渡している人を見つけた。赤い髪の、その人。やわらかい表情と、さりげない優しさを持つとてもとても綺麗な人。
「あかし、くん…」
彼の名前を小さく呟く。すると、何故か赤司くんは私に気づき、ぱっちり目があってしまった。え、何で分かったの?思わずばっと頭を引っ込め、頭を抱える。
でも、こんなところで立ち止まっていられない。もう一度だけ、ドアから顔を覗かせて、赤司くんを確認する。赤司くんはまた私に気づき、優しい笑みをこちらに見せた。
すると、赤司くんがこちらに近づいてきて、私の前に歩み寄ってきた。
さぁ、今こそ私を信じて。
「あのね、聞いて欲しいことがあるんだ―」
恋する一週間。