今日は休日。雲ひとつない青空。何をしようかと考えて、この前駅前にできた雑貨屋さんに行こうと、お気に入りの服を纏って家を出た。アイポッドをポケットから出して、好きなアーティストの新曲を選択すると、イヤフォンから音楽が流れる。イヤフォンのコードを揺らし、ルンルン気分で街を歩く。


バスに乗って、駅前まで行こう。そう思い立ち、近くのバス停へ向かうことに。バス停に着くと、何人か人が並んでいた。


「あ」
「あ」


その何人かの中に、髪の赤い赤司くんが並んでいた。いつもと雰囲気が違うのは、私服だからだろうか。イケメンっていうのは、何を着ても美しい。


「ぐ、偶然ですね赤司くん」
「あぁ、どこかいくのか?」
「私は駅前の雑貨屋さんに。赤司くんは?」
「駅前のスポーツショップだ」
「どうやら同じ方向みたいですね」


…ちゃんと喋れてるだろうか。この3日間は彼に迷惑をかなりかけていると思う。今日こそは普通の人としてなっているだろうか。うむむと1人考え込んでいると、バス停にバスが到着した。どうやら結構空いているようだ。


「…はっ」


ここで1つ、問題が発生した。―赤司くんと同じ席に座るべきだろうか―。いや、そもそも2人で買い物するというわけじゃなく、偶々一緒になっただけで…。


「?どうかしたか?」
「イエ、ナンデモナイデス」


右の後ろから2番目の席に座った赤司くん。その左側の席に私は腰掛けようとしたのだが。


「こっちに座らないのか?」


ナチュラルに誘ってきたじゃないか!!!こ、これはどうするべきなんだ!?わ、私は…あの、あの赤司様の隣に座ってもよいのだろうか。で、でも!折角聞かれてるんだし…あああでもでも、他人と身体があたるのは嫌いではないのだろうかあぁでも他の人に迷惑だし…。百面相していると、早く来いと少し怒ってらっしゃる赤司様。


「…シツレイシマス」


結局、赤司様の威圧に押され、渋々彼の隣に腰掛ける。おおお、全国の赤司様ファンの方々すみません。赤司様の隣に座ってしまいました。バックバックバクバク。彼にも聞こえそうなくらいの心臓の音。もう本当に彼は心臓に悪い。


「今日は部活はないんですか?」
「いつも部活じゃ疲れるからな。休みにした」
「ふふ、優しいですね」
「部活中にぶっ倒れられると困るからな」


肘をつき、窓の外を眺める赤司様は、絵になるような美しさです。写真を撮りたい衝動を押さえ、それもそうですね、と何とか理性を保った。


「…あぁ、そういえばあの日、何であんなところにいたんだ?」
「へ?」
「hello」
「あ、あぁ…あの時ですか。友人が黄瀬涼太のファンで、応援の付き添いで行ったのですが、女子の奇声が…」
「…あぁ…あれには頭を悩まされている」
「練習の邪魔になりますしね」


なんて会話をしていると、目的の駅前へ到着。荷物をまとめ、お金を払って赤司くんと私はバスを降りた。


「では、私はこれで」
「あぁ、またな」


ひらひらと手を振り、赤司くんはその場を後にした。そこに残った私は1人、頬を赤くしてその場にうずくまった。こ、これはやばい!


(赤司くんといっぱいお喋りしちゃった…!!)
- ナノ -