「ねぇねぇ聞いてよ名前ー!昨日テレビでねー!」
「あーあれ、黄瀬でしょ?黄瀬涼太」
「そー!黄瀬君かっこよかったよねー!!」
「うんそーだねー」


私はデルモ(笑)より某乙ゲーの斎藤さんの方が断然好みなんだけどなぁ。心の中で密かに呟いた。


私の周りの友人はこんな人ばかり。うちの学校の人気者のデルモ(笑)の黄瀬涼太のファンや、アイドルオタク、ジャニーズオタク、男子運動部などのファンなどと言った三次元ばかりである。どうしてみんな二次元に思いをはせないのかなぁ。画面は裏切らないのに。なんて思いながら友人の話を聞き流す。

すると突然、友人が私の背後を見て顔を赤らめていた。何のことやらと思っていると、後ろから肩を叩かれた。吃驚して後ろを振り返れば、さっきまで話題になっていたデルモ(笑)の黄瀬涼太氏がニコニコ笑顔で私をみていた。


「名字名前さん…っスよね?」
「あーハイ、そうですけど」
「ちょっといいスか?」
「え、良くないですけど何ですか一体」


突然の呼び出しに困惑し始める私。そもそも、何故私が彼に話しかけられているのかも分からないし、彼との接点なんて微塵もない。あと周りの女子グループの視線がいたい。…はっ!ま、まさか脅し…?!


「え?!ちょ、私お金もってないですけど?!」
「え?!なんか勘違いしてないスか?!」
「え?!何なんかごめんなさいお金持ってないですからほんとにお弁当あげますから」
「…あーもう!アンタを連れてこないと俺の命が危ないんス!」
「ちょ、ほ、ホントに何?!」


若干怒り始めた黄瀬氏は、乱暴に私の腕を引っ張る。おお、さすが男女の差。抵抗してもびくともしない。諦めた私は渋々彼の後ろをついていくことに。







*





「あの、ここは?」
「バスケ部の部室っス」
「えっと、私バスケ部の方々に何かしましたでしょうか…?」
「さぁ?俺も頼まれてアンタを呼んだだけっスから」
「頼まれて?」


ガラッとバスケ部の部室のドアを開けて中に入る黄瀬氏について中に入る。少々薄暗い部屋の奥に、人影が映った。目を凝らしてみてみれば、昨日の赤髪が目に入った。


「すまないな名字。呼び出してしまって」
「あ、赤司氏…」
「え、何?知り合いっスか?」
「黄瀬、もういいぞ。退出だ」
「あ、ハイっス。じゃあ名字さん、無事を祈るっス」


ヒラヒラと手を振って黄瀬氏は部室から出て行った。部屋に残ったのは私と赤司氏。昨日とはまた変わった雰囲気を醸しだしていて、思わず悪寒。

ん?待てよ、そうだ。確か赤司って…赤司…赤司…!!!!!


「あのバスケ部のキャプテンの!?」
「昨日ぶりだな」


思い出してしまった。赤司征十郎。バスケ部の主将で、絶対的威圧力とその整った容姿で、周りを制圧していくという…あの赤司征十郎か!うわ、昨日は何てことをしてしまったのだろうか。あの赤司様相手に厨二ネタをやってしまった…面目ない。


「…えっと、昨日はスミマセン…ブラッドナイト氏」
「…もうそれはやめてくれ」


結構恥かしかったようで。赤司氏は険しい顔をして頬をかく。おお、なんだよ可愛いところもあるんじゃねーか畜生。


「で、あの。なんで私を呼び出したんですか?」
「あぁ、実は昨日言い忘れていたんだ」
「?」
「良ければこれからも君とは仲良くしたいと思ってるんだ」
「なんでやねん」


な ん で す と 。
あの赤司様から友達希望だと?!驚きすぎて関西弁になってしまったではないか。どういうことだと思っていると、赤司氏が話を始めた。


「俺はこういう立場上、周りと趣味が合わずに1人でこの世界を楽しんでいるんだ」
「あ、二次元ですね」
「でも1人だと語ることもできない。だからといって周りに俺の趣味を打ち明けることもできない」
「嫌われたらイヤですもんね」
「そんなときに名字にあってしまった…って…おい…何で泣いてるんだ」
「…っ…うっ」


彼の話を聞いていると、なんだか私と重なって。涙腺崩壊してしまった。赤司氏が慌てて鞄からタオルと出して私の涙を拭ってくれた。くっそイケメン。そんな彼の手をぎゅっと握り、私は勢いに任せて彼に宣言した。


「お友達になりましょう!!!!!!」









*





今思えば、なんということをしてしまったのだと後悔しか残っていない。あの赤司氏と仲良しになるなんて、周りの女子が黙っていないだろう。まぁ、そんなのも手遅れだが。



「アドレス交換してしまったしなー」


携帯電話を開けて、電話帳に新しく入った名前の頁を開く。赤司氏のアドレス。ちなみに@マークの前はmkmk-akashi。ミクミクでした。ちなみにそこを突っ込んだとき、嬉しそうに赤司氏が微笑んだので全てぶっ飛んだのは言うまでもないだろう。


まぁ、折角できた共通の趣味を持った友達だし、周りの目を気にしつつ、仲良くやっていこう。そう心に決めて私はまた駅前のファミマへ足を運ぶのだった。
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