どうやら私の身元がばれてしまったようで、黄瀬涼太に呼び止められて焦る私。そして私以上に焦った顔をする赤司氏と黒子氏(但しマスク越しなので見えない)。さて、どうするか。


「あー、ハイ。私が名字です」
「この間は大丈夫だったっスか?」
「ハ?」
「赤司っちに呼び出された時ッスよ!何かされなかったッスか?」
「いえ、なにも」
「赤司っちを怒らせたら怖いッスよ〜!頭に角が生えるッスからね〜」


ブチン。私の後ろで何かが切れる音がした。視線だけ後ろに向ければ、赤司氏の後ろに怒りのオーラを醸し出す般若が見えた。黒子氏はプルプルと後ろで震えていた。多分これ笑ってるよ。そして黄瀬涼太よ、それに気づけ。


「それにしても名字さんのお友達さんは変な人ッスねー…店の中で帽子被ったりファミレスなのにマスクしてたり」
「まあ、人それぞれですから」


ぴきり。今度は黒子氏から怒りのオーラが。な、なんだ黄瀬涼太…こいつ…気づかないのか?!神経鈍すぎだろ。ほら、黒子氏が凄い勢いで携帯電話を弄りだしたよ。


数秒も経たないうちに、黄瀬涼太の携帯がメールの受信を知らせる。ちょっとごめんッスっと言ってすぐにメールの内容を確認する。すると、黄瀬涼太の顔は見る見るうちに涙目になり、ばっと仲間の方に振り返った。


「黒子っちから死ねってメールきたんスけど?!」
「知らないのだよ」
「知らないよ。のだよ」
「名字さんまで〜…ひどいッスよ」
「おいそこの!真似をするな!」
「緑髪くんか〜わ〜い〜い〜!のだよ」
「う、うるさいのだよっ」


え、やだ緑髪くんかわいいなにこれ。押し倒したい。緑髪くんをからかっていると、くいっと後ろから服の裾を引っ張られた。赤司氏だ。赤司氏が圧倒的怒りのオーラを出し、ただじっと私を見つめた。


「あー、んじゃ、私達これから用があるんで」
「いえいえ!引き止めて悪かったッス!お連れさんも名字さん勝手に借りちゃってスミマセンでしたっ!」


そう言って黄瀬涼太はシャララと笑顔を振りまいた。この笑顔、とても苦手である。


「んーんっ!名前もみんなとお喋りできて楽しかったぁっ!ありがとぉっ!」


貼り付けたエンジェル(笑)スマイルで倍返し。2度とそのペラペラ笑顔見せんな。




「あの人、いつもあんなペラい笑顔なんですか?」
「いえ、黄瀬君は心を開いた人にしかあまり自分の表情を出さない人です」
「黄瀬はああいう奴だ。仲良くしてやってくれ」
「仲良くする気はサラサラないんですけどね」
「まぁ、黄瀬君ですからね」
「黄瀬だからな」
「やだ黄瀬涼太かわいそう」


黄瀬涼太の不憫さに少し同情した。
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