私たちのいる机の斜め前にある大きなテーブル石に奴らは座った。黒子氏と赤司司は俯いたまま何も喋らず、2人は携帯電話を弄っていた。なにやってんだか。

と、その時。私の携帯電話にぱっとバナーが映る。チャットアプリのグループ招待だ。まぁこの流れから察するように、赤司氏が今即興で作ったであろうグループだ。迷うことなくそのグループに参加し、画面の様子を伺った。



‡§赤司§‡:どうするんだ((((;゚Д゚)))))))
ペンネーム:赤司氏取り敢えず落ち着いてww
黒子@僕は影だ:緊急事態ですね
ペンネーム:黒子氏も携帯持つ手震えてますよ
‡§赤司§‡:m9(^Д^)
黒子@僕は影だ:なんでもいいんで取り敢えずどうするか考えましょう
ペンネーム:すみませんそれより私たちすっごく見られてます


斜め前から5人の視線がジロジロと注がれている。どうしてこっちを見るんだ。おとなしくハンバーグ注文しとけよ!!


「それにしてもあそこのテーブル、変な人達ッスねー」
「すげー荷物の量だな…」
「…店の中でマスクと帽子とは訳が分からないのだよ」
「しかもみんなして携帯触ってるしー」
「も、もう!こらみんな!そんなこと言ったら聞こえちゃうよ!」


えぇえぇ聞こえてますとも。普通に聞こえてますよこの野郎。みんなの言葉で2人は若干落ち込んでるし!黒子氏に至ってはハンドルネームの@の後を年中マスクマンに変えてるし。


ペンネーム:ちょww黒子氏wwwなにやってんすかwwww
黒子@年中マスクマン:今日から年中マスクつけますね( ^ω^ )
‡§赤司~年中マスクマン~§‡:明日のメニュー3倍にしてやろう
ペンネーム:なんでそうやって赤司氏も便乗するんですかwww


もうなんなのこの人達。私の腹筋返して。


黒子@年中マスクマン:どうしますか。場所変えますか?
‡§赤司~年中マスクマン~§‡:早くこの場から逃げ出したい
ペンネーム:じゃあここから10分程のところにあるマジバに移動します?
黒子@年中マスクマン:そうですね
‡§赤司~年中マスクマン~§‡:O⊂((・x・))⊃K!


ガタガタと移動する準備を始める。大量の荷物を持ち、急いで机周辺を片付ける。


そのときだった。


「ぅ、わ」


バーンという大きな騒音が店内に響き渡った。その音の方に視線を移すと、黒子氏が片付けていたコップが、床に落ちて割れていた。黒子氏の指から少し血が出ていて、そしてその側には、やんちゃそうな子供3人がその光景を見て、罰が悪そうな顔をして立っていた。


「だ、だだ、大丈夫ですか?!」
「はい、大丈夫です。少し指が切れただけなので」
「えっとー…ちょっと待ってください!」


机に備え付けてある紙ナプキンで血を拭い、かばんから常備してある絆創膏を出して、患部に貼り付ける。暫くすると、騒ぎを聞きつけた店員さんが急いでモップと箒を持ってきてくれて、片付けを手伝ってくれた。子供は小さな声でごめんなさい、と黒子氏に謝った。その後、その子供の親も来て、黒子氏にひたすら謝っていた。


「まぁガラスで指を少し切っただけなので大丈夫だと思います。が、家に帰ったらちゃんと消毒して絆創膏を張り替えてくださいね」
「ありがとうございます」
「応急手当の手際がいいな」
「ああ、父が医療関係の者でして。そういった知識は一通り叩き込まれました」


さて、騒ぎも収まったところで。とっととマジバへ移動しよう。席を立とうとしたとき、これまた大きな声が響いた。


「名字さん!」


何故2人以外の声が私を呼ぶのだ。答えはただひとつ。


「赤司っちに呼び出された名字さんッスよね!?」


緊急事態発生なのです。今度はお前か!

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