「…あれ、」
目覚めの良い朝だ。どうしてかというと夢を見たからだ。正しく言うと、夢で意識を持てなかったことにより、本当に脳が休息できたからだ。
現実世界へと意識が戻り、時計に目をやる。時刻は朝の8時10分くらい。少し寝過ごしたか。早く支度しないとと思い、身体を起こす。のだが。
「おも、っ」
身体が上手く起き上がらない。そう、言うなら何かが私の上に乗ってるような。何とか寝返りをうち、自分の上に乗っている物を確認する。
「…は、え?ん?」
人だった。
「え、ちょ、泥棒?!やだ、え、いや?!ちょまって、え、」
規則正しく寝息を立てているのは、明らかに人だ。…昨日はちゃんと戸締りした筈なのだが。じゃあ一体これは誰だと言うのだ。
「……煩い」
「あ、スイマセン」
って、何で侵入者に謝ってんだよ私。と、兎に角、ここから出て行ってもらうべきか。取り敢えず話しかけてみることにした。
「あの、すみませんここ、私の家です」
「…チッ、うるせーな」
もぞもぞ。布団から出てきたその人。漸くその顔を見ることが出来た。かと思えばまた吃驚。
「あ、貴方は…!」
「…んだよ」
「公務員さん!」
夢の中の公務員さんだった。
「何処だよここ…」
どうやら、向こうも今の現状に理解できていないらしい。まぁ、悪い人じゃなかっただけまだいいか。公務員さんはゆっくりと身体を起こし、何故か私の枕元にある眼鏡を掛けた。そして私を見て、は?と一言。
「あ、おはよう…ございます?」
「…何だよここ」
「私の家ですけども、なんで貴方が居るんですかね?」
「知るかよ」
「で、ですよねっ」
それにしても、こんな事が現実であるのか。夢で知り合った人物が、今、何故か私の家にいるのだ。瞬間移動というものか。
「えっと、私何かしましたかね?」
「さぁな」
「…随分と冷静ですね」
「暴れた所でどうもならないだろ」
確かに。さすが公務員と言ったところだ。一人納得していると、突然公務員さんは立ち上がり、部屋を出た。
「何処いくんですか?」
「飯」
「あ、そうですね。朝ですもんね、私用意しますよ」
「あ」
「はい?」
「お前、学校」
公務員さんのさす指の先には、時計。時刻は9時。
「あーっ!遅刻ーっ!!!」
「っ、うるせぇ」
「あーどうしよ、皆勤賞目指してたのに…」
「残念だな」
「もういいです…優雅な朝ごはんを食べてから行きます」
どうせ今更行っても遅刻なのは変わりない。平気で家の椅子に座り、テレビを見る公務員さんを横目に、私は冷蔵庫の中の卵を手にとった。