「ちひろっ」
「ひゃっ!…び、吃驚したぁー…なまえちゃんかぁ…」
「あそぼ!」


千尋が油屋に来てからというと、名前は千尋にべったりだった。
仕事が始まる前も、途中も、終わった後も。兎に角、前は私の後ろにいた名前は、千尋の後を追うようになっていった。


「なまえはねっ!かみさまだからなんでもできるよ!」
「へぇー…凄いね!」
「ほめてほめてーっ!」


頭を撫でてもらい、上機嫌な名前。しかし、千尋はまだ仕事中。遊んでばかりではいられない。仕事の邪魔をしては困る。


「名前」
「はくちゃま!あのねっ!なまえねっ!ちひろにほめてもらったのーっ!」
「それはいい事だな。だが、千尋は今仕事中だから。邪魔はやめなさい」
「やだやだっ!」


頬を膨らまし、千尋の後ろへ逃げるように周り込む。はくちゃまの意地悪なんていって、悪戯に舌を出した。


「ほら名前。こっちに来るんだ」
「やだっ!ちひろと遊ぶのっ!」
「名前!」


はっとした時には遅かった。大きな声で叱ってしまった。 やってしまったと名前を見てみると、泣きそうな顔。あぁ、また世界の地形が歪む。なんて思っていると私の予想とは裏腹に、泣き声は聞こえてこず、代わりにぬいぐるみが飛んできた。


「はくちゃまのばかーっ!もうぜっこう!」


だだだと別の部屋へ走っていってしまった。どうしてこうなったのだと頭をフル回転させて考えてみても、やっぱり名前が泣かなかった理由がさっぱりだった。いや、それよりも堂々と絶交されてしまった。あぁ…なんということだ。


「…千尋、すまない」
「うん、別に私はいいんだけどなまえちゃんが…」
「私が後で連れ戻す。そなたは仕事の続きを…」
「あ、そうじゃなくて、ね」


ちゃんと、仲直りしないと。 なんていって千尋は苦笑した。


(どうしてこうもうまくいかないのだろうか…あぁそれよりも、絶交されてはどうすることも出来ないな…)
((ハク…すっごく悩んでる…))
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