「はくちゃまっ」
「…名前か。どうした?」
「ひと!」
「…人、?」
「ひとのにおいがするのー!」


名前は橋の方を指差して、にっこり笑ってそういった。


* * *


名前の言うとおり、橋に少女がいた。どうやら迷い込んだらしく、一緒に来た両親は湯婆婆に豚にされてしまっていた。急いで川を渡れと指示をしたが、おそらくは無理だろう。


「はくちゃま、あそこ」


名前の視線の少し先に、小さくうずくまったさっきの少女。とても懐かしい、そう、少女の名は…―


「…ちひ、ろ」
「ちひろ?」
「あぁ。彼女の事を、私は知っている」
「?てれぱしー?」
「いや、遠い昔の記憶の隅に、くっきりと残っている」


名前の手を引いて、私はゆっくりと千尋に近づいた。


(私は、そなたの味方だ)



さみしいなんていわないよ。
なまえはかみさまだから、わがままいわないよ。
はくちゃまがなまえのことあとまわしにしても、
なまえはかみさまだから、なかないよ。


- ナノ -