すまーとほん
今日は珍しくジンとウォッカと外へ出ている。任務があるということで、同行させてもらえる事に。
「ねぇウォッカ、あれは……オウダンホドウ？」
「正解ですぜ」
「ねぇウォッカ、周りの人たちが持っているあれはなぁに？」
「あれは…スマートフォンと言って…持ち運べる電話って思ってくれれば」
「まぁ素敵！ジン、わたしもすまーとほんが欲しい！」
＊
というわけで。貰いましたすまーとほん。
「ねぇバーボン、これでどう使うの？」
「これは色々と使えますよ。とりあえず、僕の番号を登録しましょう」
バーボンにすまーとほんを渡す。すると、慣れた手つきですまーとほんを操作する。
暫くすると、はい、とバーボンがすまーとほんをわたしに手渡してきた。
「とりあえず、僕の番号登録したので物は試しです。一度電話をしてみましょう」
そう言ってバーボンは画面を指差し、操作の仕方を教えてくれる。指示通りに画面を押す。
「最後にこのボタンを押して、スマートフォンを耳に当ててみてください」
バーボンは最後に一言残し、どこかへ行ってしまった。残されたわたしは、言われた通りに最後のボタンを押し、すまーとほんを耳に当てる。ぷるるる、ぷるるる。
『もしもし？』
「お、おお？？」
『聞こえてますか？』
「うん…バーボンはどこにいるの？すまーとほんの中にいるの？」
『「いいえ、こうなっています」』
物陰から現れたバーボンは、わたしと同じようにすまーとほんを耳に当てて話していた。声はすまーとほんからも聞こえてくる。
『「これを使うとこうやって遠くにいても直接話すことができます」』
「す、すごい…！」
『「では名前、耳からスマートフォンを話して画面の下にある赤いボタンを押して会話を終了しましょう」』
すまーとほんを耳から離し、赤いボタンを押す。声はなにも聞こえなくなった。
「すごい！すごいよバーボン！すごいね！！」
「なにもすごいことはやってないんですけど…ありがとうございます。ジンや他の人にも言えば、番号を登録できていつでもどこでも声が聞けますよ」
「な、なるほど…！」
＊
「兄貴、電話ですぜい」
「…」
任務のために車で移動している途中、兄貴の電話が鳴っていた。声をかけると無言で画面を見つめていた。恐らく名前だろう。スマートフォンを手に入れ、バーボンに操作方法を教わって以来、いろんな奴に頻繁に電話をするようになっていた。ちなみに30分前にも兄貴に電話をかけていたような気がする。兄貴はなにも言わずに電話を取った。
『ごきげんよう、名前だよ。今はてれびを見てるの。ジンは何をしているの？』
「仕事中だ」
『なるほど。それはカンニン』
「切るぞ」
『あ、待って』
「何だ」
『早く帰ってきてね？布団が広くて寂しいの』
「大人しくしておけ」
『あっあと、ウォッカはいる？ウォッカとお話をしたいの』
漏れてくる声が俺を指名してきたようで。兄貴が俺にスマホを渡してきた。スマホを拝借し、機体を耳に当てる。
「もしもし」
『ごきげんよう、ウォッカ。何をしているの？』
「仕事ですぜい。何か用事ですかい？」
『わたしいまてれびをみてるんだけども、ぷりんっていうお菓子が食べたいの』
「…へいへい…買って帰りやす…」
スマホを兄貴に渡し、１つため息をこぼす。
彼女がスマホを持って変わったこと。メンバーにラヴコールという名の迷惑電話（但し満更でもない様子）が頻繁に来ること。俺にラヴコールというパシリの依頼が増えたこと。
世間知らずの姫様の要望に応えるため、自分のスマホを使い、米花町のオススメプリンを探すことにした。