「あ、そういや先生」
「なんですか」
「普通のときは雪男って呼んでいい?」
「どうしてですか?」
「だってそっちの方が気が楽だしさ」
「…好きにしてください」
「うーっす」





* * *





「んじゃ、帰るわ」


靴を履いて、部屋を出る準備をする。鞄を持って出ようとしたときだった。雪男が部屋の奥から忘れ物と言って俺のウィッグを持ってきた。


「その格好で帰るつもり?」
「おー…忘れるとこだったぜ、センキュー」


ウィッグを受け取り、そのまま頭に被る。今から俺は女の子のなまえちゃん…。俺はなまえちゃん…。


「うんっよしっ!じゃあ雪男くんっ!また学校でっ!」
「ちゃんと勉強してくださいね」
「えへへっ!考えておくねぇ」


そしてドアノブに手を掛けようとした。その時。


「雪男ー!飯できたぞー!」


ドアが勝手に勢いよく開いたかと思えばいきなり大声で少年が叫んだ。うるせぇ。


「…お?お前…確か…」
「へ?」
「塾の…えーっと…」
「なまえだよぉ」
「え、お、おぅ」
「貴方の名前はなぁに?」
「俺?俺は「奥村燐。僕の双子の兄だよ」
「え、雪男くんのぉ?」
「え?雪男…くん?」
「雪男くんとは仲良くやってるのぉっ」
「雪男!お前まさかリア充…!!」
「仲良くしてる(かどうか分からない)けど、そんな関係ではないよ(僕にはそんな趣味ないし)」
「さては2人で仲良く密会…?!雪男!兄ちゃんは悲しいぞ!」
「ふふっ、燐君って面白いねぇっ」
「…え、あ、」
「?どうしたのぉ?」
「いいいい、いやっ!何でもねぇ…!」


はっはーん…さてはこいつ…俺に落ちたな。まぁ俺に落ちない奴なんて簡単にはみつかんねぇと思うけどな。さて、どうするか。


「な、なぁなまえ」
「なぁに?」
「腹、減ってねぇか?」
「そう言われてみれば…少し減ってるかもっ」
「もし良かったらなんだけどさ、晩御飯、今から一緒に食わねぇか?」
「え?」

そうきたか


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