「おい名前、何やってんだよ」
「だいきくんだー!えっとねぇ、推理ゲームだよー」


練習メニューをサボって中庭へ行くと、木陰のベンチに見慣れた後ろ姿が見えた。声をかければゲーム機をこちらへ見せてへらっと笑った。


「あ?推理?」
「んん、ちょっと苦戦しててねー。あ、だいきくんも一緒にする?」
「…いや、俺推理とか苦手だし」
「そっかぁー」
「…あー、でも、まぁ、ちょっとなら付き合ってやるよ」
「ほんと?!」


しょんぼりとした名前を見てなんだか申し訳なくなり、つい付き合うと言ってしまったが、推理なんて俺にはさっぱりだ。どうしようかと考えていると、やっぱりやめる、といってゲーム機を仕舞った。


「え、やんねぇのか?」
「せっかくだいきくんといるから、だいきくんと一緒に遊ぼーって思って」
「…おう、そうだな」
「んんー?でも、だいきくん部活はー?」


痛いところをつかれてしまった。ストレス溜まって疲れてんだよ、と誤魔化してみるが、こういうところは鋭い名前。俺の腰に抱きついてきた。


「だいきくん」
「うぉ、な、なんだよ」
「あのね、人間はハグするとストレスが三分の一に減るんだよ」


珍しく真面目な口調で話す名前に吃驚しながらも、ゆっくりと名前の背中に腕を添える。名前のいうとおり、なんだか心が軽くなっていくようだ。


「だいきくんはね、頑張り屋さんだから」
「なんだよそれ」
「ちょっとくらいサボってもいいよねー」
「…知ってたのかよ」
「んんんー?何のことかなー?」


なんておどけて言う名前につられて笑う。そろそろ行かねぇと赤司に怒られそうだ、と体育館へ向かおうとするが、名前が腰から離れない。


「名前、俺そろそろ行くわ」
「だいきくんの腰はこう、フィットするよね」
「なんだよ」
「このまま歩いてもいいよー」
「そういう意味じゃ…あーもう、いい。分かった」


離れてくれそうにない腰に巻きつく名前を連れて、体育館に戻ることにする。あー、赤司が怒りそうだなこりゃ。
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