「ねぇ名前ちんいるー?」
「あぁ、名前ちゃんね。端っこでゲームしてるよー」


名前ちんに呼ばれて図書室に行けば、端でゲームをしてる名前ちん。ゆっくり後ろから近づいて、肩に手を置けば変な声を出して飛び跳ねた。


「うひゃぁ?!」
「名前ちーん」
「わわわ、あつしくんきてくれたんだー!」
「用って何ー?」
「えへへ、こっちこっちー」


名前ちんに手を引かれ、図書室の奥へと案内される。かと思えばぴたりと足を止めて、目の前の大きな本棚を指差す。


「本?」
「うん!取ってほしいの」
「えー。そんなことでわざわざ呼ばないでよー」
「せーくんにね、紫原にとってもらいなよって言われた」
「…その地味に上手い真似は誉めたほうがいい?」


赤ちんに似てる仕草と声で上手く再現してくれた名前ちん。確かに、名前ちんの身長じゃ届かないくらい大きい。俺でも少し背伸びをするくらいだから、赤ちんじゃ無理かな。


「とどきそう?」
「うーん、多分」
「あ!分かった!」
「…?」
「へへへっ、あつしくん、肩車ー!」
「…あぁ」


その手があった。キラキラした目で俺を見る名前ちんに押されて、肩を貸すことに。失礼しまぁす、と名前ちんが肩に乗って、バランスが取れているを確認して、ゆっくりと立ち上がった。


「すっごーい!高い!」
「高くてもいいことないよー?」
「わわ、すごいよー!えっと、1歩右へお願いします!」
「ほい」


右に1歩進めば、軽い鼻歌に乗せて、何冊か本を取る名前ちん。何借りるの?と聞いてみると、ぱっと視界に本の表紙がうつる。ゲームの攻略本。ゲーム楽しいのかなぁなんて思っていると、もういいよーと上から名前ちんが俺の頭を撫でながらいった。

「貴重な体験をありがとー!」
「んー。別にいーよ、このままで」
「いいの?!」
「高いの、好きなんでしょー?」
「うんっありがとー!」
「今度お菓子ちょーだい」
「あ、私今日クッキー作ってきたよ!」
「…欲しい!」
「んん、んじゃぁ教室へれっつごー!」
「ごー」


受付の人に本を渡し、手続きをしてもらう。凄い目で見られたけど、頭の上から聞こえる機嫌のいい鼻歌も聞こえるし、これから貰うお菓子もあるから、まぁいっか。
- ナノ -