「しんくーん」
「…何なのだよ。重いから早くどけ」


赤司と次の試合について体育館の端の方で話をしている時、背中に重い何か飛び乗ってきた。俺の背中に飛び乗ってくるのは名前だけである。首を捻れば、ニコニコと笑っている名前が、やっほぅとゲーム機片手に挨拶をした。


「いつもご苦労さまー」
「…早くどけといっているだろう」
「勿論せーくんも!」
「ありがとう」
「人の話を聞け…!」


俺の話なんて聞きもせずに背中にへばりつく名前。そしてそんな名前と会話する赤司。一体こいつらは何なのだよ。どうにかして名前をどかそうとしても、それをしたらしたであとが厄介になる(恐らく外周5倍)ので、こちらが折れるしかないのが現実なのだ。…肩が痛い。


「…今は取り込み中なのだよ、さっさと出て行け」
「私せーくんに呼ばれてきたんだけどねー」
「なんだと…?!」
「俺が呼んだんだ」


ばっと赤司を見れば、なにやらたくらんでいる笑みを浮かべていた。

曰く、名前のゲームの才能を生かしてバスケに応用するやら何とやら。全くもって理解不能である



「バスケとゲームを一緒にするな!」
「バスケもゲームも同じだよ!」
「緑間。この間の試合、覚えているかい?」
「あ、あぁ…変なフォーメーションの試合だろう。覚えているのだよ。それが何だ?」
「あのフォーメーションは名前が考えたんだ」
「は?!」
「戦略も1人でやってくれたよ」


この間の試合。いつもとは全く違う変なフォーメーションで挑んだ試合だが、いつもより自分が動きやすく、尚且つスムーズにパスができたあのフォーメーション。そして赤司にしては変なゲームメイク。あれを名前が考えたというのか。背中でヘラヘラと笑っているこいつがか?あり得ん。


「あり得ないのだよ」
「しんくん誉めてくれないのー?」
「誉める意味が分からん」
「だってだって!あの試合圧勝だったでしょ?」
「俺達の実力が勝(まさ)っていただけだろう」
「…もー!ひどいよしんくん!しんくんのばか!」


機嫌を損ねた名前は、俺の背中を容赦なく叩く。これが地味痛いのだよ。痛さに耐え切れなくなり、ラッキーアイテムの予備でもっていたクマのぬいぐるみを手渡す。すると、機嫌が良くなった様で。


「へへへっ!しんくんありがとー!」


現金なやつなのだよ。


「さぁ緑間。お前は外周2倍だ」
「…理解ができないのだよ」
「お前は名前の機嫌を悪くしただろう?」
「もう良くなってるではないか!」
「5倍だったのを2倍に減らしたんだよ。ありがたく思え」
「代わりに私をおんぶしながら走るよー」
「そ、そんなの無理なのだよ!」
「やぁだねぇー!ほら、早く走ってよー!」
「煩い!」


結局、外周2倍を科せられた俺は、名前を背負いながら走ることしか選択肢はなかった。
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