「せーくん、ごはん」


幼馴染の彼女、名前に引っ張られて連れてこられた屋上。人が結構いて賑やかなその空間の隅に、名前はレジャーシートをひいた。


「どーぞ」
「…準備がいいな」
「んんん、お腹空いたー」


早く食べよ。そういいながら名前は靴を脱ぎ、レジャーシートの上に座った。その隣に俺も腰を下ろす。


「いただきます!」
「いただきます」
「…」
「…何だ」
「せーくんのたまご、一口ちょうだい」
「…自分のがあるだろ」
「なら私のあげるよ!」


いらない、と断っても名前は俺の意見に耳も傾けず、俺の弁当箱の蓋に自身の卵焼きを置き、俺の弁当箱から卵焼きを取ってそのまま口に放り込んだ。


「んんんんん!うみゃーい!」
「…はぁ」


なんて調子で昼食を食べ進める。おかずを取られつつ、昼食を食べ終わり、ぼーっと空をみて心地よい風を楽しむ。名前はというと、いつものように携帯ゲームを楽しんでいた。


「またゲームか」
「ん、新作なんだー」


せーくんもやる?と機器を差し出されたが、丁重にお断りしておいた。俺の返事に不服なようで、名前は頬を膨らまし此方を見ていた。


「うー」
「何だ」
「せーくんはズルい!」
「何がだ」
「だから膝枕ー!」
「意味が分からん」


ゲーム機器を仕舞い、ごろん、と名前の頭が俺の膝を枕に寝転がる。周りが騒ぎ出したが、俺も名前も気にしない。


「せーくんのお膝は安心するなぁ」
「そうか」
「んんん、眠い…」


目元をこすり、欠伸を零して目を瞑る。どうやら一眠りするようで。ふわふわとした髪を撫でてやると、心地よさそうにふにゃりと笑った。


「えへへっ」
「…名前」
「…」
「…名前?」


ゆっくりとした寝息を零し、早速寝ていた名前。どうやら楽しい夢を見ているようで、時折、抜けた笑みを浮かべる。そんな名前につられて俺の頬も少し緩む。


幸せそうな寝顔を眺め、残り10分ほどの昼休みかと時計を見ながら、読みかけの本を手に取った。
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