カーテンの隙間から漏れる太陽の光と、息苦しさで目が覚める。…いや、おかしい。何故息苦しさを感じるのか。俺の部屋の室温は常に適温を保っている筈。目が覚めて数分の動かない脳を必死に回し、重たい瞼をゆっくりと開けて、息苦しさの原因を突き止める。
「んん、んにゃ、」
すると、視界いっぱいに名前の顔が映った。思わず顔を顰める。そうだ、名前だ。こいつが俺を抱き枕にしているせいで息苦しいのだ。身体をがっちりとホールドし、気持ち良さそうに俺の胸の中で寝息を立てていた。涎が垂れているのは気のせいにしたい。
「名前、朝だ」
「…んん、やぁだー…」
一向に起きる気配がない。困った。これでは部活に行けない。どうやって起こそうかと考えてていると、枕元から必殺仕事人のテーマソングが流れた。流れているのは、名前の携帯からだ。
刹那、寝ていた筈だった名前は、その音を聞くなり勢いよく飛び起き、携帯に飛びつく。画面のディスプレイをみるなり、顔を青ざめた。
「…ど、どうしようう…!ママとパパが…3日後に…帰ってくる…!!!」
*
「突然だが今日から3日間の部活はナシだ。一軍レギュラー以外は解散だ」
残された一軍レギュラーのメンバーは、赤司っちを囲んでその場に残った。なにが始まるんだと周りをみると、みんな揃って青ざめた顔を見合わていた。近くにいた黒子っちに何があるのかと訪ねると、うるさいです、と一蹴された。
「ちょ、黒子っち酷い!」
「おそらくアレです….」
「今年もやんのか…」
「えー、ウソでしょー」
「…腹を括るしかないのだよ…」
みんなが口を揃えて嫌だと言い張る。一体何が始まるのか。暫くすると、漸く赤司っちが喋り始めた。
「名前の両親が3日後に帰ってくるそうだ」
その一言で空気が変わった。そう、いうならば絶望のオーラ。
「30分後に部屋着と3日分の下着を持って各自動きやすい服装で俺の家の前に集合だ」
いや、だから何が始まるんスか?!
*
「う、うお…でっけぇ…」
赤司っちの家に着くと、他の人達はもうきていた。服装は俺含めた全員がジャージ。豪邸の前でジャージを来たデカい集団がうろつく。かなり目立つ。
「黄瀬君遅いです」
「全然はやいッスよ?!つか、何が始まるんスか?!
」
「…そういえば、黄瀬君は去年はモデル(笑)の仕事でいませんでしたね」
「いや、なんで今(笑)いれたんスか」
全員が揃ったところで、大きな豪邸から赤司っちが出てきた。もちろんジャージ姿。
「よし、いくぞ」
*
徒歩1分足らずで、名字とかかれた表札のある家に到着した。恐らくここが名前っちの家だろう。至って普通の家で、強いて言うなら少し大きな家。
なんの躊躇も無く赤司っちは家の扉をあけて中に入る。それに続いて俺たちも中に入ると、大量のゴミが俺たちを出迎えた。みんなはうげ、とかまたか、とかそれぞれ零していた。
「ここ、名前っちの家ッスよね…?」
「そうだ。名前、出てこい」
「んんーみんなおはよー」
赤司っちが名前を呼ぶと、部屋の奥から体操服姿の名前っちがやってきた。体操服の胸元に縫われている名前が赤司なのには触れないでおく。
「用意はできているか?」
「んー!みんなよろしくねぇー」
「あの、今から何するんスか?」
「うん、お掃除!」
なんだ、ただの掃除か。簡単じゃん。そう思いながらも1人頑張るぞと意気込んだ。だが数分後、自分の考えが浅はかだったと痛感するのは、この時の俺は知らない。