「んんんんん、」


朝、いつもの時間に起きて玄関にいるジョン(亀)に挨拶。ポットでお湯を沸かし、朝ごはんのカップラーメンを作る準備をする。その間に歯を磨いて制服を着て、教科書を鞄へIN。色々準備している間にポットのお湯が沸いたので、容器にゆっくりお湯を注ぐと、ふんわり香ばしい胡麻のにおい。おいしそう。容器のふたを閉じて出来上がる3分間を使い、別のコップにティーバッグをいれて、余ったお湯を注ぎ込めばカップラーメンタイマーがピリリリ。これにてカップラーメンの完成なり。今日の朝は味噌胡麻味のカップラーメンとアップルティー。


「いただきます」


ちゅるるる、ごっくん。味噌胡麻おいしい!なんて思いつつラーメンを食べ進める。あっという間に食べ終わり、口直しに残りのアップルティーを飲み干す。すすず、ナイスアップル。ごちそうさまでした。容器をゴミ箱に捨て、洗い物をその辺に寄せておいて、そろそろ学校へ行く準備。ジョンにいってきます、といえば、いってらっしゃいと返事が返ってきたように思いながら家を出る。

歩いて1分。せーくんのおうちに到着。インターホンを鳴らしてせーくんが出てくるのを待つ。
しばらくすると家のドアが開き、寝間着姿のせーくんが吃驚したような顔をして衝撃的な発言をした。


「今日から夏休みだけど」











*







「はあああああ」
「どうしたの?名前ちゃん」


結局、バスケ部のマネージャーの手伝いを頼まれた私は、さつきちゃんと一緒にドリンク制作なう。クーラーの効いたこの部屋の温度は26度。外の気温は32度。もうここから出たくない。


「なーんで学校きちゃったんだろ」
「名前ちゃんならずっと部屋でゴロゴロしてそうなのにね」


ふふっと笑ってさつきちゃんは完成したドリンクたちを籠に入れる。いったいそのドリンクには何が入っているのやら。神のみぞ知る。


「わーわーわ、私もつよー」
「え?でもこれ結構重いよ?」
「さつきちゃんはドリンクちゃん作ってくれたから私は運ぶのー」
「う、うーん…じゃあ、任せようかなぁ」
「任されましたあああ!」
「ごめんね、名前ちゃんはマネージャーじゃないのに」
「ううん、せーくんに頼まれただけだからだいじょうぶー」


人数分のドリンクたちが入った籠を持ち、体育館へ。むわっとした空気が漂う体育館では、選手たちが丁度走り込みを終えた所で、大半の人が体育館に寝そべっていた。そんな中ふと目についたのは、体育科の隅で膝をついて動かないテツヤくん。


「わわわ、テツヤくん!!」
「…あぁ、名前さん…」


急いで駆け寄ってドリンクとタオルを渡せば、ありがとうございますと弱弱しい声を発してそれを受け取った。


「ううあ、テツヤくんっ…死なないで…うっ」
「ちょっと、人を勝手に…殺さないで下さい…、」
「せーくんにいっておくから、端っこでゆっくりしててね」
「スミマセン、ありがとうございます」


テツヤくんの側を離れ、今度はせーくんのいる場所まで走る。側までくると、せーくんがなんだ、という顔で私を見た。実はかくかくしかじかで、と説明すると、後は桃井に任せるから大丈夫だ、といった。これでテツヤくんは安心だね。


「せーくんは?」
「何がだ?」


じっとせーくんの顔を見る。なんだか少し顔が赤いような。視線を送っているとせーくんは何だと私をにらんできた。でもやっぱり顔が赤い。


籠をその辺に置いて、せーくんにじりじり近寄る。後退るせーくんの腕を掴んでこちらに引き寄せれば、ぐらり。せーくんはバランスを崩してこちらに倒れこんだ。


「おい、名前」
「私はずっと涼しい部屋にいたから冷たいでしょお?」
「…そうだな」


どうやら暑さには帝王も太刀打ちできないようで。肌から伝わるせーくんの熱は、なんだか心がほっとした。









「…名前、くすぐったい」
「んんんんん」


名前の吐息が首にかかってむず痒い。鎖骨当たりに顔をぐりぐりと押し付けてくるという名前の奇怪な行動は、周囲の視線を集めた。


「おい赤司なんだよそれ」
「気にするな」


だが、名前と触れている肌からは冷んやりとしていて、冷気がでているかのように冷たい。ずっと冷房の効いた部屋にいたからだろう。それでも、俺の火照った身体を冷やすには丁度いい。


名前を見習い、俺を額を名前の鎖骨あたりに押し付ける。びくりと名前の身体が跳ねた。ひんやり。これはこれでいいクールダウンだ。


「…名前、もういいから」
「…んんん、もうちょい」


そして暫くバスケ部の間では、この噂で持ちきりとなるのだ。
- ナノ -