期末試験前日。私…いや、私たちは絶望の淵に立たされていた。


「お、おおう…わかんにゃい…」
「ほら、次だ次」


バスケ部部室にて、みんなでお勉強会なう。なのです。


「あーわかんね。無理。俺今回は無理だわ」
「今回はじゃなくて、今回も、の間違いでしょう」
「…うるせー」


「ああああわかんねぇっスよこんなの」
「馬鹿め、こう問題を出された場合は1番の公式を使うと何回も言ってるだろう」
「6つもあるんスよ?!こんなの全部覚えれるわけないじゃないスかー!!」


成績が危ない私たち、私とだいきくんとりょうたくんは、それぞれ頭がいい人に勉強を教えてもらうことになった。誰が誰を教えるかは話し合いで決まり、せーくんは私を、テツヤくんはだいきくんを、しんくんはりょうたくんを教えることに。もう始まって1時間が過ぎたかな。早速詰みそうです。


「ううう、せーくんの鬼ぃぃ…こんなのわかんないよー…」
「こうでもしないとお前は勉強しないだろう」
「ううう、ゲームしたいよーう」
「…ゲームはテストが終わった後だ。ほら、もう一度上から解くぞ」
「ううう」


さっきの復習も兼ねて、もう一度上の問題から解いていく。せーくんのお陰で、なんとなく…なんとなーく理解できたような。できてないよーな。ゲームしたいなー。


「んんんと、こうして、これを」
「でもここは移項するから」
「これがひっくり返って…こう!」
「これで数学は大丈夫だな」
「えへへー、ありがとーせーくん!」


数学の勉強に一区切りついたとき、買い出しに行っていたさつきちゃんとあつしくんが丁度いいタイミングで帰ってきた。手には大きな袋をいっぱい持っている。


「ただいまー!ごめんねー遅くなっちゃった!」
「ちゃんとお菓子は買ってきたからねー」
「ふおおおお…!プリンは?プリンは?」
「勿論、ちゃんとここに!」


じゃじゃーん!という効果音は聞こえてきそうな勢いで袋から出てきたプリン。勉強のご褒美なので、いつも買うのよりも輝いて見える。


「いただきまーす!」
「まだ全部終わってないだろう、没収だ」
「や!もう開けたもんねー!食べるもんねー!」


せーくんに取られる前にプリンをスプーンで掬い、そのまま口に入れる。口いっぱいに甘いプリンの味が広がり、少し苦いカラメルが甘ったるさをゆっくり溶かす。んま!


「ふへぇ」
「ふふっ、名前ちゃん幸せそうだね!」
「俺もプリンにすれば良かったしー」
「ぷりんはあげないんだからねっ」
「ほら、食べ終わったら続きをやるぞ」
「えー!せーくんも教えるの、疲れたでしょー?」
「疲れてな、んぐ」


せーくんが話し終わる前にプリンを口に突っ込む。せーくんは吃驚して目をまんまるにしてたけど、プリンを飲み込んでから、此方を一睨みした後、盛大なため息を吐いた。


「…5分だけだからな」
「えへへ、やった!じゃあこのプリンははんぶんこだね!」


息抜きは必要だもんね。勿論プリンは2人で仲良く半分こ、幸せも半分こ。














「おわったー!長かったテスト終わったよううう」
「…お前は殆ど寝て過ごしていただろう!」
「ちっちっちー、それくらい余裕だったってことだよ、緑間くん。なのだよ。」
「真似をするな!」
「2人とも、俺を挟んで騒ぐのはやめてくれ」


一週間の長い長いテスト週間が終わり、速報で出される成績順位を見に行くことになった私とせーくんとしんくん。どうやら2人も余裕のようでわいわいと楽しく喋りながら掲示板を目指す。


「せーくんが1位でー、しんくんが2位でー、私は50位以内かなぁー!!」
「50で余裕とは良く言ったものだな」
「違うようしんくんー。50位以内に入ったら大体の高校には行けるから、私は無駄な努力をしないだけだよう」
「…そうか…それは俺と赤司の努力を否定したという事だな」
「ち、ちがうの!ちがうのごめんなさい!せーくんもしんくんもすごいよ!」


人集りをひらりと交わし、掲示板の前に立つ。上から順番に名前を確認してみれば、頂点にせーくん、その次にしんくん、あと45位くらいに私の名前があった。ちなみにテツヤくんは43位なのです。


「ほら!50位以内!」
「…そんな微妙な順位で喜ぶな馬鹿め」
「せーくん1位おめでとおー!」
「当然の事だ」
「…俺の話を聞くのだよ」
「はっ…そういえばりょうたくんとだいきくんはどうなったんだろ…」


自分の名前より下の欄を見ていくと、最後のほうにだいきくんの名前が、そしてそれの10くらい上にはりょうたくんの名前がそれぞれあった。


「どうやら追試は免れたみたいだな」
「それでもこの点数か…あいつらは何をしていたのだよ」
「でもでも、前より順位はとってもおおきくなったし、これはみんなの指導のお陰だねぇ」


ありがとうの意を込め、せーくんとしんくんの手をぎゅうっと握れば、2人は痛いと言って私をじとりと見た。だけどまぁ満更でもないみたいだから、これはこれでよしとする。期末テスト、完。
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