「室長暇です、ね」
「貴方にはやるべき仕事が残っているでしょう」
「そうだ、学校へ行こう」





* * *




室長の話を無視し、私は葦中学園へとやってきた。可愛らしいリボン、少し短めのスカートを身に纏い、学園を潜り抜ける。

「私実はここの生徒、なんだよねー」


言い忘れていたが、私は17歳。そう!正真正銘のJKである。因みにこの実年齢を知っているのは、室長とみこっちゃんだけ。まぁ面倒だから全然行ってないし、学校には病弱と言ってあるんだけどね。


「さぁ久々の学校だし楽しい、時間を過ごそうか」


陽気な鼻歌と共に、私は中庭へと足を進めた。




* * *





「今更勉強しても意味、ないしなぁー」


欠伸を漏らし、椅子に腰掛ける。普段なら賑やかな其処は授業中の為、誰も居ない静かな空間と化していた。息抜きするには丁度いい所である。


「静か、だなぁ」


うとうと、うとうと。静かに流れる時間と風が心地よい。もういっそこのまま寝てしまおうか。なんて考えてみる。眠りの国へと繋がる扉をあけようとした時だ。


「相変わらず童貞丸出しって感じだなァ、美咲ィ」


聞きたく無かった声が耳に入ってしまった。うっすらと見えたのは、青い服の猿比古くん。と、その反対側に立っている八田きゅんと鎌本。


「何、やってんだろあの、2人」


お互い何かを言いあっている。2人は仲良しだなぁ。昔も、今も。妙に似ているというか…なんというか。まぁ、私には関係ないことなんだけども。

と、2人の行方を見守っているとなと、戦い始めたではないか。おおおおいおい、ここ学校だよ?一般人いるよ?ここに学生いるよ?


「争いは好きじゃ、ないんだけどなぁ」


戦う2人がみていられなくなって、目を伏せる。言い合う声が嫌になって耳を塞ぐ。こんな所を見ていられなくなって小さくなる。暗い視界の中で、早く戦いが終わればいいのに、なんて呟いたけど、2人には分かってもらえなくて。争いは激しさを増していった。


どうにかしたくて2人の仲介に入ろうとした時だ。2人の間に衝撃波が渡った。ふむ、これは世理ちゃんのかなぁと予測してみると、ビンゴ。


「双方そこまで!」


凛とした声が、辺りに響き渡った。どうやら八田きゅんは納得したようで、鎌本と一緒にその場を後にした。その場に残ったセプター4の人たちは、なにやら話し合いを始めた。

何を話してるんだろ、と遠くからみてると、カツカツと猿比古くんが此方へ歩み寄ってきた。おっとばれたら危ない。物影に隠れ身体を疼くめていると、カツッと近くで足音が止まった。


何で止まったんだろ、と物陰から覗き込んでみる。だけど、そこに人影はない。


「あれみんな、どこいったんだろ」
「何やってんだよ、名前」
「あうっ」


ふわりと身体が中に浮いたかと思えば、どさりと身体が落とされる。いてて、と声を漏らし、ぱっと上をみると眉間に皺を寄せた猿比古くんが眼鏡を光らしてたっていた。あれ、嫌な予感しかしない。


「何やってんだよ」
「えへへ潜入、調査?」
「チッ…副長。こいつ、どうするんスか」
「…そうね…取り敢えず戻ってから始末書を書かせるわ」
「え」


ダラダラダラダラ。身体中から汗が吹き出る。そう、始末書にいい思い出がないのだ。始末書を室長にわたすと、あんなことやこんなことをやらされ、ううう。身震いと鳥肌が立った。


「だだだだめ絶対だめ!」
「あら、貴方が仕事を放ってきたのが悪いのでしょう?」
「うっ」
「残念ね」
「残念どころじゃ、ないよ…」
「そう…なら後で私から差し入れをしておくわ。ずんだとあんこ、どちらがいいかしら?」
「…1人でガンバリマス」


拝啓吠舞羅のみなさま。私はずんだとあんこと舌打ちに心が折れそうです。
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