「…どういうことだよ…!」


それは、ちょっとばかし前のお話。







   *







「は、…今なんて…」
「だから私今日からセプター4、だっていってるじゃないか」


ガシャンと持っていたスケボーを落とし、目を見開ける八田くんの気持ちも分からなくはない。

私は、宗像礼司に引き抜かれた。理由はイマイチだけど、兎に角引き抜かれた。私は特に断る理由もないので、その話を承諾した。只、それだけだったのに。

呆然と立ち尽くす八田くんは、やがて小さく口を開けた。


「お前も、あの猿と同じかよ…」
「それは違うよ」
「違わねぇよ!!」


ぐりぐりと迫ってきた八田くんは私を壁に追いやり、私の胸倉を掴んだ。


「なんで断らなかったんだよ!」
「断る理由、が無いからだよ」
「それでもお前は吠舞羅だろ!」
「確かに私は吠舞羅だけど私は、「もういい」


私の言葉を、遮った八田くんは、私の胸倉を下ろし、そのままバーの扉を開けた。


「ちょっと、表出ろよ」



*

静かな空気が私と八田くんの間に流れる。八田くんは私を見据え、小さく息を吸い、金属バッドを構えた。


「2人ともやめとき」
「すみません草薙さん。でも、これだけははっきりさせたいです」


こいつの、本当の気持ちを。

その言葉と同時に八田くんは、ぶわっと炎を身に纏わせた。


「お前も銃出せよ」
「うん」


そう言われて私は腰のホルダーの中に仕舞ってあるリボルバーを出す。


「来いよ名前」
「…うん、」


マズルを八田くんに向け、ハンマーを引き起こし、私はトリガーに指を掛けた。


発砲音。

それは、辺り一帯に響き渡り、そして八田くんは目を見開いて私を見た。


「おま、それ…空砲…」
「…私は争い事を止めるために銃を、向けるんだよ」


カシャンとリボルバーが私の手から落ちる。でも、そんなのはどうでもよくて、私は八田くんの前に立った。


「それに君はは、矛盾しているよ」


上げた八田くんの顔は、酷く悲しそうだった。


*


「なんて事が、あったよね

「あれは名前が悪いだろ!大体、吠舞羅からは抜けないって事をちゃんと言ってたら…!」
「ほら八田きゅんって、早とちりだから」
「は、早とちりって何だよ!」
「でもだからこそ、私は今でも吠舞羅に居座れるんだろうね」
「…当たり前だ。お前は吠舞羅の一員だからな」
「うん、ありがと」

それは他より少し仲のいい、少年少女のお話。

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