「で、どうしてジュダルがここにいるんだ」


だから皆さん、私ですってば。



* * *



「だから私なんですってば!信じてくださいよ!」
「お前の言葉は信用できん」


そう言ってシン様は指をポキパキとならし始めたではないか!あれ、デジャヴ…


「このまま帰すわけにもいかないしなぁ?」
「ひゃ、」


この人、本気だ…。



だがしかし!私にもちゃんと秘策というものがあるのだ!
ババンとシン様の前に立ち、私は深く息を吸い上げた。


「あ、シン様昨日は大丈夫でしたか?」
「…はぁ?」
「昨日私の部屋に来て「一緒に寝よう」なんて言ってましたよねぇ?」
「な、なぜそれをジュダルが知ってるんだ!それはナマエとの秘み「どういうことですかシン」
「ば、バカ違うんだジャーファル!違う「シン様が夜這いをしたんですよ、未遂ですが」そ、それを言うな!」


シン様の顔が真っ青になっていく。こいつは大丈夫だと鼻を鳴らし、私は後ろにいるジャーファルさんに向き直った。


「ジャーファルさんも知ってるんですよ?ジャーファルさんの右肩に黒子があることを!」
「な、っ?!どうしてそれを…!それはナマエさんにしか教えていない筈…!」
「偶々そういう話をしたときに見せてくれましたよね?「私も肩に黒子ありますよ」って」
「っ…!」


ジャーファルさんの顔が真っ赤になっていく。彼も大丈夫だとにっこり笑みを零しながら、再び二人に向き直った。


「さぁ、これで信じていただけましたか?」















「要するに、ナマエとジュダルの中身が入れ替わったというわけだな?」
「だから最初から言っているじゃないですか」


ようやく理解したシン様がまじまじと私を見つめる。信用しているような、信用していないような。半信半疑といったところか。


「どうすんだよバカ殿、こんな可愛いナマエを煌帝国に返すのかァ?」
「…ぐっ…それは…」
「な?」


嫌な笑みを浮かべるジュダル。本当に彼は私の顔を上手く使いこなしてると思う。ああジャーファルさん、そんな絶望したような顔をしないで。


「さっきのナマエさんは…」「ギャハハ!引っかかってやんの!」
「ちょっとジュダル、ジャーファルさんを苛めないでよ」
「引っかかった方が悪ぃんだよ、俺は悪くない」
「兎に角、これからどうするかっていうのが問題だ」


シン様の言葉で辺りが静まる。そう、これからどうするか、が1番の問題だ。シン様はきっと、ジュダルをこの国においておくことを快くは思っていない筈。だけど、私の事を思ってくれてジュダルを追い返せないんだと思う。


「俺は別に何処へ行ってもいいんだぜ?この身体じゃ苦労はしなさそうだし」
「それは困る。ナマエの身体で何か問題を起こされたらナマエが危険になる」
「私はここにいるのは難しいかな。一応ジュダルはこの国にはあまり良く思われてないだろうし」
「ダメです!ナマエさんをこの国から追い出すなんてできません!貴方はここにいるべきです!」
「随分と過保護だなぁ、そんなにナマエが大切か」
「えぇそうですとも、本当は貴方とナマエさんが関わっていること自体が許せないのですがね」


こんなことを言っていてはキリがない。どうすればいいんですかね、とシン様に問いかけてみると、シン様はその大きく優しい手で(ジュダルの姿をした)私の頭をふわりと撫でた。


「大丈夫だ。ナマエをどこかへ連れて行くこともないし、ナマエの身体も危険な目に遭わせたりなんてしないさ」


そういうと、シン様は言い合っているジャーファルさんとジュダルの仲介に入り、2人を説得し始めた。


「ジュダル、ナマエの身体だと魔法は使えないんだったよな?」
「浮遊魔法どころかルフもボルクも出ねぇ」
「そうか、なら答えは1つだな」
「…まさかシン…!」
「ジュダルには当分ここに居座ってもらう」


本当にこの王様はどうかしているんだと思う。



(他の八人将にはちゃんと説明しないとな)
(…そう簡単には受け入れないと思いますが)
(大丈夫だジャーファル!お前がいるからな!)
(…は!?)



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