「狡噛さんおはようございます!」
「朝から元気だな」
「私は年中無休で元気でございます!」


朝からお騒がせ監視官が、執行官一人一人に挨拶周りをしていたようで、俺の方にも挨拶をしにやってきた。
朝から騒がしい、と思っていても、わざわざ執行官に挨拶をする監視官なんて滅多にいない。そのため、煩いと機嫌を損ねる奴はいないのだ。

だが、俺は違う。


「狡噛さん、今日は脱がないのですか?」
「ブッ」


彼女の爆弾発言に飲んでいたコーヒーを吹き出したのは俺ではなく縢。縢はコーヒーを拭きながら、どういうことだとでも言いたそうな目で俺と彼女を見た。


「やだ縢くん汚ーい」
「変な事言うのが悪いんだよ!大体何で朝からコウちゃんが脱ぐ必要がある訳?!」
「縢くんには関係ないもーん。私と狡噛さんの2人だけの秘密なんだから」
「…ま、まさか…」
「言っておくが、お前が思ってるような関係ではない」


勘違いをしている縢の誤解を解く。本当にそういった関係ではなく、ただ一方的に彼女が俺に付きまとうだけ。そんな犬と飼い主の様な関係なのだ(立場的には反対だが)。


「うーん、でも縢くんも結構良さそうだよねぇ」
「な、何がだよ」
「ふふ、ちょっと失礼ー」
「うわ、ちょ、」


悪戯な笑みを浮かべ、名前は縢に飛びつき、慣れた手付きで縢の服のボタンを外していく。ここまでくるともはやセクハラだ。助けを求めるように縢が俺の名を呼ぶ。悪いな縢、俺と名前の関係を勘違いした罰だ。


「んふふ、どうしたのー縢くん。さっきの威勢はどうしたのぉ?」
「何でもいいからやめてくれ…ひぃッ」
「あら、なかなかいい身体してるじゃない」
「ホントに何なんスか…」


わさわさと縢の身体を弄る名前。時折、縢の身体を見て、噛み付きたい上腕筋だとか、舐め回したい腹筋などと言って騒ぎ出した。


「ちょ、アンタ何者なんスか?!」
「名字名前。監視官」
「いや、そうじゃなくて」
「…そいつは、筋肉がすきなんだよ」
「は、?きん…?」
「名字監視官!いい加減にしろ!!」


縢がどういうことだよ眉間にシワを寄せていると、今まで黙っていたギノが鬼の凶相で名前を睨み、怒鳴りつけた。しかし、その怒りは名前に届かない。


「ふふん、ギノくんも脱いでくれるの?」
「ふざけるな。今すぐ縢から離れろ。そして仕事をしろ」
「やーだね、わたしまだ縢くん食べてないもーん」
「部下を食うな!そんな暇はない筈だろ!」
「なんで俺が食う食われるみたいなことになってんスか?!」
「……」


言い争いをしていると名前は突然、静かになった。どうしたのかと見てみれば、局長、と呟き、ギノの後ろを指さした。まぁ局長なんている筈がないが。


「…局長?!」
「うっそぴょーん!隙やりー!」
「ぎゃああああああ!!!!」


ギノの隙をついた名前は、縢の腹筋に顔をうずくめ、甘噛みをした。縢はというと、まぁ、大体察しがつくだろう。


「ひっ、ちょ、ホントに…」
「ふふぁあ、んん、縢くんおいしいなぁ」
「…っ、そこ、…やめ、っ」
「ふふ、かわいーなぁ」


何をやっているんだこいつらは、呆れて2人を見ていると、呆然と立ち尽くすギノが、顔を若干赤らめながら、わなわなと震えていた。そんな束の間の平和である。


あなた(の筋肉)が好きです!


(おおまおお、お前ら!不順異性交遊だぞ!!!)
(ちょ、なんで俺にドミネーター向けてるんスか?!俺被害者ですよ?!)
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