「名前さん。寒い季節になりましたね」
「そうですね」
「こういう日こそ、鍋を食べようではありませんか」
「仕事してください」
「そうですね…今日は鍋パーティをしましょう」
「仕事してください」
「業務命令です」
「職権乱用ひでぇなおい!!」







室長の訳のわからない提案により、鍋パーティをすることになった。メンバーは室長と副長と伏見先輩と私。…いつものメンバーである。


「さぁでは始めますか」
「俺今日早番だったんスけど帰りたいんスけど」
「伏見、弁えなさい」
「…チッ」
「では皆さん。持ち寄った鍋の材料を出してください」


和室に机を出し、コンロの上に鍋を置いて、それぞれが鍋の材料を出す。…なんだか鍋に似合わないものが大半だけど。


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!みなさんなんですかそれ!」
「どうかしましたか?名前さん」
「みなさんの材料、鍋に入れるものじゃないですよね?!」
「おや、鍋に蕎麦は不釣合いでしたか」
「蕎麦はまだしも…その隣にあるのはなんですか」
「ひよこ饅頭です」
「鍋ですよね?これ、鍋ですよね?!」
「ここのひよこ饅頭の評判が良いと聞きまして」


そう言って室長はにっこりと笑った。ひよこ饅頭が美味いかなんて正直どうでもいいんだよ!!どうやったらひよこ饅頭を鍋に入れるという発想ができるんだ!…仮にも…仮にも青の王が、鍋に饅頭?あり得ない。ひよこ饅頭に呆れていると、副長が早く始めましょうといって鍋に材料を入れ始めた。


「…ちょっと待ってください副長!なんですかそれ!」
「鍋にはあんこでしょう?」
「あんこ?!」
「あら…ずんだの方が良かったかしら?」
「それは副長の家だけです!普通の家では鍋にあんこもずんだも入れませんから!」
「そう…それは残念ね」


困った顔の副長も可愛い…可愛いけどっ!その手に持っているあんこがかなりモチベーションをかなり下げているのに気づいてっ!
本当にここの上司は変な人ばかりだ。一体どうなってるセプター4。まともな上司はいないのか。


「オイ名前。何とかしろよこの鍋。中身黒いぞ」
「その前に何してるんですか伏見先輩」
「俺野菜嫌いなんだよ」


室長と副長に気を取られていたが、この人はこの人で、偏食家だったのを忘れていた。伏見先輩は、私が持ってきた鍋の材料の野菜だけを捨てていた。それ自腹なのに。


「ちょ、入れないんで捨てないでください!」
「無理。俺の視界に入ることが許されない」
「ぎゃぁぁぁあああああ!!1178円がぁぁああ!!!」
「計算してたのかよ」
「ひどいです伏見先輩!私自腹で買ってきたのに!今金欠だけど買ってきたのに!!」
「アーハイハイワルカッタナー」
「棒読みひどい!」


何だよこの上司達。



結局。あんこのスープに蕎麦とひよこ饅頭、肉が入った黒い色の鍋が完成した。勿論、誰も食べようとせず、みんなで目を合わせ、特務隊の方々を呼ぼう、という結論に達した。





(…俺、もう…無理…)
(ぎゃあああ日高さああんっ!!)
(うげ…)
(アンディさんここで吐かないでええ!!!!)
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