こわい人





 私が目を覚ますと、目の前には殺意の顔をしたひょっとこのお面がいた。お面は表情が変わらないから、何を考えていようがひょっとこの顔はひょっとこなんだけれど、目の前にいるひょっとこは不思議なことに殺意に満ち満ちていると直感した。いや、まあ、理由は察しがついてるから不思議でもなんでもないんだけれど。

「おはようございます、鋼鐵塚さん」
「挨拶の前に言うことがあるんじゃあねえのか?」
「刀無くしてごめんなさい」
「辞世の句として受け取ってやる!」
「ギャーッ!」

 私の叫び声を聞いて駆けつけたアオイちゃんがしのぶさんを呼んできてくれたお陰で、私にスリーパーホールドをかけていた鋼鐵塚さんは引き剥がされた。私は胡蝶邸での療養期間が延びた。
 ちなみに、前回初めて刀を折ったときは包丁を振り回してきたので、今日は持ってきてないんですね、と尋ねたら、前回の騒動を目撃していたアオイちゃんが、鋼鐵塚さんが屋敷に到着した際に預かってくれていたらしい。ありがとうアオイちゃん。
 鋼鐵塚さんは次無くしたら今度こそ殺すと言いながら新しい刀をくれた。それなら担当鍛治の人変えてもらいたいなあ。