頭痛が止まない





 ふん、と彼は鼻を鳴らした。
 スラスラとお得意の皮肉な言い回しをぶつけてくる。いつものことだと聞き流していたら、ちゃんと話を聞けと手に持っているタブレットで小突かれた。

「我がマスターながら気の毒さすら感じるな。何故大した用もないレイシフトでそんな大層な怪我が出来るのか、全く理解に苦しむ」
「なにさ、自分の身体については同情して欲しくない癖に。私にはするんだ」
「お前は他人から向けられる態度が全部同情に見える病気にでもかかってるのか? シェイクスピアだって他人が怒っているときは怒っていると理解出来るだろうよ。運の良さを自分の実力と勘違いするなと言っているんだ。いや、運の悪さと言うべきか。今回だってたまたま同行したあの女狐がいなかったら全滅だっただろうさ」
「はいはいすいませーん」

 ベッドの上でひらひらと手を振った。肋骨が折れているらしいけれど、カルデアの医療技術のお陰かそれとも婦長さんの治療がすごいのか、今は全然痛みを感じない。お陰でアンデルセンの小言がはっきり聞こえる。

「もう分かったからさあ、寝ていい? すごい眠い」
「老いた猫並みの睡眠欲だな」
「アンデルセンの小言が子守唄になったのかもね」

 そう言うと、アンデルセンは大きなため息をこれ見よがしに吐き出した。