なんにも守ってくれやしない





 路地裏で隣に置かれてる生ゴミの詰まった袋と同じような空気を出している一松くんが座っている。まるでこの世の全てを恨んでいてこれから核弾頭を打ち込むような顔だ。一松くんは一人で寂しく死ぬよりも出来るだけたくさんの人間を巻き込んで死ぬような性格をしている。実際に行動する度胸があるかどうかは別の話。

「なにしてるの」
「トモダチにご飯あげてる」
「友達が人間じゃないなんて寂しい奴」
「別に。こいつらの方が人間よりよっぽど賢いよ」
「一松くんよりは賢いだろうね」
「ヒヒッ、そうだね」

 私がしゃがむと一松くんは私から少し距離を開けてしゃがみ直した。彼には他人に侵されたくない領域があって、それが普通よりも広いらしかった。そんなんじゃあ生きてるだけで疲れそう。
 一松くんの友達は缶詰の中身に一生懸命食らいついている。それを眺めている一松くんは、なんだか虚ろで今すぐ前のめりに倒れそうなくらい生気がない。どず黒いなにかを体内で蠢かせているようだ。闇のオーラってやつかな。

「生きてる?」
「なにが」
「一松くん」
「生きてるけど、質問の意味が分かんない」
「いやあ、なんか幽霊みたいだから」
「そう。案外幽霊かも知れないよ」
「なにそれ。意味わかんない。ははは」
「そうだね。この会話も意味わかんねーわ」

 一松くんが友達を撫でると、三毛猫はにゃあと鳴いた。